コロナ禍で多くの生活者の価値観・行動様式・働き方が変わり、これに伴い飲用シーンも様変わりしつつあり、この変化をいち早く見極め柔軟に即応していくことが飲料・嗜好品の成長の鍵となる。外出自粛の人流抑制で外の飲用シーンが打撃を受け家の飲用シーンが拡大――。このような潮流をさらに細かくみていく必要がある。
変化の一端を示すものとして、オフィスワーカーが出社前にいつもの売場で飲料を購入したりカフェでコーヒーや紅茶を飲んだりといった行動様式が、在宅ワークやフレックス勤務が加速度的に広がったことによって家飲みにシフトするなどしてなくなりつつある。
少子高齢化で総消費量は漸減傾向にあるものの、一人当たりの飲用量がほぼ一定だと考えると、減ってしまった分はどこかで増える。人流回復など流動的な外部環境を踏まえながら、生活者の細かい変化を察知して機動的に実行していくことが求められる。
カテゴリーとしては今後、コーヒーが飲料・嗜好品の両方のアプローチで大きく動きそうだ。
20年4月・5月をピークとした外出自粛による家庭内需要の高まりで、レギュラーコーヒーを中心に家庭用嗜好品市場が拡大。中でもレギュラーコーヒーは高い伸びをみせ、これにより生活者のコーヒーに求める味覚水準が大きく向上したと推察される。
その余波は飲料にも及び、昨年はブラックで高品質をうたった新商品が多数発売されるなど細分化が進んだ。
コーヒーは、豆を挽くなどしておいしさを追求する動きと、手軽・簡便に飲みたいニーズで二極化している。この中で飲料はどちらかというとドリップコーヒーよりも簡便なものとして支持を集め、その上で、高まる生活者の味覚水準に応えるべく豆や製法にこだわるなど差別化が図られている。
飲料の今後の方向性は、健康と環境への対応が基軸となる。
健康では水・お茶やブラックコーヒーなど無糖飲料とトクホ・機能性表示食品がメインとなるが、その反動や甘いもので癒されたい“心の健康ニーズ”も見逃せない。
その兆候として昨年は抹茶ラテ飲料が市場を賑わせた。今年はこれにほうじ茶ラテなどが加わり抹茶ラテ飲料市場の発展形として和風ラテ飲料市場が勃興するかもしれない。
飲料は昨年、8月と9月の天候不順で在庫がだぶつき一部で年末にかけて価格が乱れた。変化対応や環境対応に加えて価値に見合った価格が清涼飲料水の課題となる。
コーヒーは昨年、最大の生産国・ブラジルで霜害が発生しコーヒーの木がやられたことで価格高騰に歯止めがかからず、コモデティコーヒーに引っ張られて他の産地のスペシャルティコーヒーも高騰している。
物流費・資材などのコストも上昇し、今年はコーヒー・飲料ともに値上げ局面を迎える。コーヒーは再値上げの動き、飲料はトップメーカーから価格改定の発表が予想される。