鬼滅缶“出てくる楽しみ” 外出自粛で大打撃、自販機の生き残り策 大手飲料各社のトップが考える

ダイドードリンコが人気アニメ「鬼滅の刃」とコラボした缶コーヒー(以下、鬼滅缶)は、同社飲料事業の約8割を占める自動販売機(自販機)の活性化にも貢献した。

同社自販機の販売実績は、鬼滅缶発売前の1-9月累計で10%程度落ち込んでいたのが、10月5日の発売後に好転。10月単月に5.3%増(うちコーヒー飲料は19.4%増)、11月単月に6.4%増(うちコーヒー飲料は11.2%増)と息を吹き返した。

鬼滅缶・全28種類のうち8種類は、自販機専用商品。スーパーやネット通販だけではコンプリートできず普段自販機を使用しないユーザーを誘導し“どのキャラクラーが出てくるかわからない楽しさ”も創出された。自販機での購入の様子を伝える動画が多数配信されるなど話題喚起にもつながっている。

このような活性化は一時的との見方が大勢を占めるが、“出てくる楽しみ”という自販機ならではの魅力の一端を示したのも確かだ。

現在、自販機市場は新型コロナウイルスに伴う外出自粛で都心部やオフィスなどの多く人が集まるロケーションを中心に売上げが急落し厳しい状況に置かれている。

この状況について「そもそもダウントレンドにあり状況が変わったわけではなく、3年分くらいの落ち込みが一気に加速した」と指摘するのは、サントリー食品インターナショナルの木村穣介取締役専務執行役員ジャパン事業本部長。

「自販機事業は小売業なので1店舗あたりの売上げが毎年下がるようではダメ。ダウントレンドに創意工夫して抗うのが経営だと思っている」と発破をかける。

ポッカサッポロフード&ビバレッジの征矢真一社長も「コロナは我々の弱いところを突いてくるように感じた。もともと構造改革の必要のあった自販機の課題がコロナによってあぶり出されて崩れてしまった。まだ時間があるから大丈夫と対策を先延ばしにしていたところの落ち込みが一気にきたような印象だ」と語る。

生き残りの道としては、自販機チャネルを一括りに考えるのではなくロケーションごとに細かくみていく方針だ。

「お客様に自販機を通じてソリューションを提供していく。ITやデジタルの力を借りてロケーションごとに最適化を図り、既に試行錯誤して売上げアップのためにやるべきことが見えてきたため今後はそれを粛々とやっていくだけ」(サントリー木村専務)

「ロケーションによって優劣が鮮明に出たため、自販機では可能性の薄いところから撤退し売れる場所に注力していく。自販機を一括りで捉えるのは誤りであり、自販機の中には売上げが前年を越えているところもある」(ポッカサッポロ征矢社長)とそれぞれ意欲をのぞかせる。

自販機のロケーションについて、オフィスでの回復が至難と判断するのはアサヒ飲料とキリンビバレッジ。

「リモートワークが定着するとオフィスに人が戻るのはなかなか難しい。ただし総需要が戻らないということではないので回復の余地はある。我々がやるべきことは自販機の機能をもっと強化することにある」(アサヒ飲料・米女太一社長)。

「都市部のオフィスは間違いなく減少していくと思うが、郊外は都市部に比べ底堅く推移する可能性はあると思う」(キリンビバレッジ・堀口英樹社長)との見方を示している。

アサヒ飲料では、今後の強化策の一例として、キャッシュレス自販機をはじめ、「三ツ矢サイダー」をマイナス5℃前後で販売する「氷点下自販機」や試験的に行っている食品併売自販機などを挙げる。

キリンビバレッジはサービス面に活路を見出す。

「JOCオリンピック支援自販機」。JOCと日本コカ・コーラは、選手強化支援プログラム を2032年まで延長することで合意している
「JOCオリンピック支援自販機」。JOCと日本コカ・コーラは、選手強化支援プログラム を2032年まで延長することで合意している

「かつてはお金を入れると商品がでてきた1つのマシンだったかもしれないが、今はそうではなく、お客様とのマーケティング接点であり、様々な情報やサービスが提供できる。効率性の点では、オペレーションにIoTを導入していく可能性がある」(キリンビバ堀口社長)との考えを明らかにする。

JR東日本の駅構内などで自販機を展開しているJR東日本ウォータービジネスは、約8000台の「アキュア」ブランドの自販機のうちイノベーション自販機を約400台取り揃える。

同社は今後、このイノベーション自販機で「商品を販売していく以外に通信ネットワークを多岐に活用していきたい。まだ自販機には様々な可能性があるので、駅ナカで色々なトライアルを実施したい」(竹内健治社長)と意欲をのぞかせる。

全国88万台と業界最大規模の自販機台数を誇るコカ・コーラシステムはコカ・コーラ公式アプリ「Coke ON」に引き続き注力の構え。「Coke ON」対応のスマホ自販機は36万台に上り、昨年5月には「Coke ON」のダウンロード数は2000万を突破し、スマートフォンアプリ向けの飲料アプリとしてはNo.1のダウンロード数となった。