外出自粛に伴う内食需要の高まりを受け、スーパーの食品売場は3月以降、軒並み売上げを大きく伸ばしている。4月に入ってからは品薄のカテゴリーや欠品する商品も増えてきた。それでも大手チェーンの店舗では比較的、商品が揃っているが、一方で地域の中小卸や小売店には商品が行き渡らず、需要の増加に対応できないケースが目立つ。
「注文通りに商品を納入できていたら、4月の食品売上げは前年比120%だった」。兵庫県の食品卸、藤澤の藤澤康雄会長は明かす。同社は食品のほか水産や農産も扱うが、これらは地元の外食店や温泉旅館などにも納めているため売上げが減少しており、スーパーとの取引が中心の食品部門が頼みの綱だった。しかし、家庭用商品の需要は増加しているもののメーカーからの入荷がままならず、結果的に食品の売上げは前年並みにとどまった。
和歌山県の食品卸、共栄の玉置宗克社長も「店からの注文は多いが、それ以上にメーカーの欠品が増えている」と説明する。同社も4月当初は前年比120%を上回っていたが、日を追うごとにメーカーからの入荷が減り、得意先へ十分供給できないまま最終的には105%だった。
実際にメーカーからは「休売している品が多く供給体制が不安定」(製粉メーカー)、「配荷の調整と得意先へのお断りが、営業マンの仕事になっている」(調味料メーカー)といった声が聞こえてくる。
卸に対するメーカーの対応はさまざまで、1~2ケースずつ細かく送ってくるところがあるかと思えば、一切連絡がなく、ある日まとめてパレット2枚分送ってくるメーカーもあるという。
こうした不定期な入荷は卸の現場にも混乱を招き、本来なら在宅勤務やフレックスの導入で縮小されているはずの労働時間を長くする要因にもなっている。
このように中小企業への商品が逼迫している背景には、生産の問題だけでなく、大手スーパーへの供給が優先されているという現状がある。京都の食品・菓子卸、丸正高木商店の髙木誠治会長は「大手小売が納入業者にペナルティをかけ、中小が後回しになるという構造的な問題がある」と指摘する。「政府は『商品は十分にあります』と国民に呼びかけているが、中小卸・小売は商品が入らず苦心している。これまで災害が起きるたびに繰り返されてきたことだ」と続ける。
大阪の食品卸、大物の日阪俊典社長も「地元に商品を届ける役割を果たすべき地域スーパーに商品が流れてこない。モノの流れが上位に集中している現状がある」と強調する。
正常化後は需要急減も? 収束後見据えた一手模索
こうした中、地域卸各社は欠品の解決へ向け、さまざまな対策を講じている。大阪の食品卸、大楠屋は品薄が続く市販用のプレミックス粉に替え、業務用の商品をグループの小売店舗で販売する。酒井修司社長は「全般的に業務用卸は苦戦しているので、こうした提案をすると仕入れやすい」と話す。
同じく大阪で卸とC&Cを運営するグローリージャパンの末元義和社長は「欠品しているのは大手の商品が多く、中小では逆に余って困っているメーカーもある」と説明する。同社では土産物を作っていた工場で行き場を失った商品を購入し、自社の店舗で販売したところ買い物客に好評だった。末元社長は「それがNB商品の欠品をカバーすることにもなる」と話す。
今後の見通しはいまだ不透明だ。地域卸各社も「モノが十分ある状態に戻った時、急に売れなくなるのではないか」「自粛から3か月が経つ今後、廃業を決断する得意先が相次ぐかもしれない」と不安の色を隠さない。
一方で「今はコト消費がゼロだが、収束したらその分、イベントなどが増える可能性がある」「収まった時に何ができるのか、今から準備しておく必要がある」と収束後を見据え次なる手を探っている。