3月21日、原宿駅新駅舎と新ホームが開業した。新駅舎は2層構造となっており、1階には拡張された表参道改札とコンビニがあり、表参道方面と明治神宮方面の2方向に出入口が設置されている。
旧駅舎・旧ホームと比べ、コンコースは約3倍、トイレは約3倍、改札は2通路増設となる。
旧駅舎は東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会後に解体され、防災地域の基準に適した材料を用いて旧駅舎の意匠を再現して建て替えられる予定となっている。
新駅舎2階の全フロアを占めるのが「猿田彦珈琲 The Bridge 原宿駅店」で、同店は東京23区内で最大規模となる約277㎡(約140席)の面積を持ち、現在18店舗を手掛ける猿田彦珈琲の旗艦店の位置づけとなる。
店名の「The Bridge」は、神宮橋と並ぶように線路の真上にあることから名付けられたが、命名に込めた思いについて19日内覧会で取材に応じた大塚朝之代表取締役は「人と人をつなぐ架け橋にしたい。珈琲屋の根本的なものはそこにある」と語る。
同店のオープンを皮切りに新ステージを切り開いていきたい考えで、それを象徴する1つがAIを搭載した「MOD(モッド)」と称するセミオートのハンドドリップマシンの導入となる。
これは、粉砕したレギュラーコーヒー豆をドリッパーに入れてボタンを押すと、その豆の特性に応じたやり方で自動抽出されるもので、5連となっているため複数のオーダーに同時対応できる。
ハンドドリップは猿田彦珈琲の売りの1つであり、同店ではそれを切り捨てることとなる。その理由について「手作業による情緒的価値をぶった切ったことになるが、なぜそうしたかというと、提供されるまでに10分もかかってしまうと、さすがにコーヒーとしては適切なスピードではないと考えた」と説明する。
適切なスピードも情緒的価値につながると判断し、効率化で捻出された時間を接客にあてる。「コーヒーブームは落ち着きをみせカフェは飽和状態にあるが、我々には勝算がある。接客を頑張ればだいたいの店は満席になる。順序立てて接客してお客様に喜んでいただき、心を開いて下さったときにはじめて、我々の主張である“おいしい”を伝えることができる」と述べる。
物質的価値であるコーヒーも追求。同店初の試みとして、通常メニューに加えて「The Bridge」を冠にした高級ラインのコーヒーを10種類程度用意する。(写真下記事続く)
これまで「我々がやりきりたいコーヒーは1杯1000円くらいいただかないとできないが、通常の店舗では一定の杯数に届かずロスになる可能性が高かったため出せなかった」という。
「The Bridge」の中で、様々なコーヒー業界の先人達の声に改めて耳を傾け「半年以上かけて開発しブレンドをやり切った」のが「猿田彦の夜明け -THE RISE OF SARUTAHIKO-」となる。
国際品評会カップ・オブ・エクセレンス(COE)入賞コーヒー、アナエロビックファーメンテーション(嫌気性発酵)のコーヒー、ゲイシャコーヒー、独自のバレルエイジドコーヒー(後述)の4つをブレンドし、1杯900円(税抜き)で提供。物販も行い5枚入り巾着付きのドリップコーヒーを1580円(税抜き)で販売する。
シングルオリジンコーヒーもラインアップし、その1つとなるバレルエイジドコーヒーは、コーヒーの生豆をウイスキー樽で寝かせ、ウイスキー特有の香りを豆につけた後に焙煎したコーヒーで、「深煎り(エチオピア)」と「浅煎り(ブラジル)」の2種類を時価で販売する。
樽は「マルスウイスキー駒ヶ岳」(本坊酒造・マルス信州蒸留所)に使用された樽を採用し「手作業で寝かせ2人がかりで取り出している」。
JR原宿駅とのコラボ商品も展開する。原宿駅長や駅員とともに考案した「原宿ブレンド」を1杯540円、100g900円で販売。ガラス製食器ブランドFire-King(ファイヤーキング)とJR原宿駅の3者でコラボしたスタッキングマグも用意している。
コーヒー以外に、サンドイッチ、ピタパン、洋菓子、和菓子、アイスのフードメニューやコラボグッズを多彩に取り揃える。
今後については「多くの人に求められる日本一の珈琲屋になりたい。原宿店の開業で猿田彦珈琲は大きな転換期を迎える。店名にはその架け橋という思いもある。珈琲屋として尖っていたいが、尖っているだけにはなりたくない。やはり多くの人に喜んでもらえる珈琲屋になりたい。別の珈琲屋で働いていたときに東日本大震災が発生し、その1、2時間後に不安を抱えた人が多く訪れた。そのように頼られる存在でもありたい」と意欲をのぞかせる。
同社は11年6月に東京・恵比寿で創業し、現在、台湾の3店舗を含め計18店舗を展開している。