2020年は子年。ネズミというと食品業界とはあまり相性がよろしくなさそうだが、多くの子を産むことから古来繁栄の象徴とされてきた。東京オリンピック・パラリンピックの開催で世界中から千客万来の今年を起点に、子年にあやかり少子高齢化に打ち克って食品業界の新たな繁栄へのスタートを――といったあいさつが各地の新年会で聞かれることだろう。さて本紙新年号吉例、元祖「業界天気予報」では、今年も担当記者の知見と独断で業界の天気をずばり予想。各カテゴリーの年間見通しをお届けする。
課題解決型商品に支持 強まる“コスパ重視”
今回、本紙が「はれ」または「快晴」を予報した品目・業種は35。昨年をやや下回ったものの、引き続き全体の約3分の1を占めている。
なかでも現代の生活者が抱える課題をスマートに解決する商品やカテゴリーには支持が集まり、今年も好天が予想されている。
たとえばベビーフード。働く母親の増加や時短調理ニーズの高まり、調理機会減少によるスキルの低下から、開けてすぐ使えることの価値は高まり、少子化の逆風下でも市場拡大が続くとみられている。
家庭での調理機会の減少は、意外なところではマヨネーズの伸びにつながっている。食事になるべく時間やお金をかけることをしたくない消費者にとって、冷蔵庫に常備できてどんな料理にも合うマヨネーズは、コスパの高い万能調味料。サラダ用途ではドレッシングから乗り換える動きもあるといい、従来の“マヨラー”だけにとどまらない幅広い人気を獲得しつつあるようだ。
また今年も快晴が見込まれる缶チューハイをはじめとしたRTDは、11年連続で販売数量が拡大。ビール類など他酒類からの流入もあり、幅広い層に受け入れられている。なかでも度数7%以上の高アルRTDはここ数年で躍進、市場の5割強を占める主力ジャンルに躍り出た。これも「安く、早く酔える」というコスパ重視の消費傾向と無関係ではなさそうだ。
市販用冷食では、個食化商品やトレー入りなど時短・簡便ニーズに対応した商品が好評な一方で、少子化を背景に弁当市場は縮小。その消費動向が時代を映している。
強い健康系カテゴリー 五輪控え躍進機運
健康性や機能性でアピールできるカテゴリーも、相変わらずの強さをみせる。
健康食品の市場は、いまや1兆2千億円を超えるまでに成長。なかでも東京五輪開催を控え、スポーツ向けの栄養補給商品が急伸している。
ヘビーユーザーの定着とともにライトユーザーのトライアルも増える豆乳は、市場がこの10年で2倍超に躍進。料理用途の需要も増える。
家庭用油でも、オリーブやえごま、アマニなどのプレミアムオイルが健康性とおいしさで支持を獲得。なかでもオリーブオイルはキャノーラ油を抜いて最大カテゴリーに成長した。
ナッツ類も健康志向を背景に、さらに裾野が拡大しそうだ。アーモンドはここ10年で市場が大躍進。くるみ、ピスタチオといった品目もその機能性で注目度が高まりつつある。
正確には豆類に分類される落花生も、ナッツ同様に健康性で注目を集める。渋皮由来のポリフェノールをはじめとした有用な成分を豊富に含みながら、アーモンドなどに比べて価格が安いことも魅力。手頃で高コスパの健康食材としての地位が高まりつつある。
保存食で「おいしく防災」
昨年は長梅雨と冷夏、その後も猛暑に続き、台風と水害による被害が相次いで日本列島を襲った。ここ数年の災害多発から非常時に備えたローリングストックの考え方も家庭に浸透しつつあり、カップ麺や缶詰などが“おいしい保存食”として注目される機運にある。昔ながらの保存食である乾物類も、防災食としての活用法の認知拡大もあり価値が見直されつつある。
ただ日頃からの備えは大切とはいえ、「万が一」が起こらないに越したことはない。いよいよ2020年。今年こそ平穏無事な一年となることを願うとともに、活気と希望に満ちた社会へと前進する年としたい。