環境対応加速させる飲料業界 企業の垣根越えた空容器回収を検証 日本コカ・コーラとコカ・コーラボトラーズジャパンが発信

日本のプラスチック製品におけるペットボトル(PET)の割合は6%――。

PETの処理処分の84.8%はPETや繊維・シートに再生するマテリアルリサイクル(58.7万t)で占められ、焼却処分されるのは微量――。

PETはそもそも環境負荷が低いという事実と、さらなる環境負荷低減に向けた飲料業界の取り組みを日本コカ・コーラとコカ・コーラボトラーズジャパン(CCBJI)が16日、メディア勉強会を開催して発信した。

冒頭挨拶した日本コカ・コーラのホルヘ・ガルドゥニョ社長は「PETは適切に回収しリサイクル処理することができれば、最も環境にやさしい素材になりうると確信している。競争優位性を獲得するための取り組みではなく、我々がリードすることで競合の皆様も追随していただき業界全体で取り組むことを願っている」と呼びかけた。

PETの回収率は日本コカ・コーラの推計で98%以上。残りの1~2%の未回収分のうちの一部が河川や海にごみとして流出しているものと考えられ、日本コカ・コーラと日本財団は未回収分の流出経路やメカニズムを把握するための大規模共同調査を行っている。

流出防止策としては業界全体で対応。これまで各社で行っていた自販機リサイクルボックスの空容器の回収を業界協働で行うことを検証する。

全国清涼飲料連合会(全清飲)は、11月の1か月間、東京都江東区、墨田区で約1000個の自販機リサイクルボックスでの業界協働回収モデル事業の検証を環境省の支援のもとで実施する。

全清飲会員社8社とオペレーター(自販機専用業者)12社がこれに賛同した。これにより、流出につながる散乱防止や回収を効率化することによる国内資源循環の向上に加えて、人手不足などを含めた労働環境の改善などを検証していく。

回収の現況についてCCBJIの稲川晶子IR&コーポレートコミュニケーション本部コーポレートコミュニケーション統括部CSV推進部担当部長は「缶やPET以外のものが入れられているのが現状。テイクアウトのカップで投入口がふさがれてしまうと、周囲に空容器が散乱し清掃も重労働になる」と訴えた。

缶やPETの空容器にタバコの吸い殻などが混ざると、再生原料として品質が非常に低いものになり再生に大変な手間とコストがかかることも指摘。CCBJIではプラスチックに関する重要な事実を名刺の裏面に記載するなどして啓発活動を行っている。

PETのリサイクルは、リサイクルPET加工業者が各ルート(市町村の容器リサイクル法ルート、市町村の容器リサイクル法以外のルート、スーパーやコンビニなどの店頭で回収された事業系ルート、自販機で回収された事業系ルート)から使用済みPETを購入して選別・破砕・洗浄を行い、フレーク、ペレット、PETのもととなるプリフォームを経て行われる。

「回収率は高いが、処理しきれない汚れたPETが海外に輸出され、日本国内で100%地産地消できていないのが問題。現在の日本の処理能力は45万tしかない」と指摘するのは、招かれた遠東石塚グリーンペットの顔宏任営業本部本部長。同社では100%地産地消に向け、88年から培ったリサイクル技術を用いて汚れたPETもPETに再生している。

その理由について「市町村の容器リサイクル法ルートは半年に1回の入札でベールを落札できないと生産できなくなる可能性が非常に高い。当社では入札だけに頼らず、どこも使わない汚れたPETも使っているのが大きなポイント」と説明した。

日本コカ・コーラシステムでは、グローバルビジョン「World Without Waste」(廃棄物ゼロ社会)に基づき、18年1月に設計・回収・パートナーを柱とした「容器の2030年ビジョン」を設定。7月12日には、従来の目標達成の前倒しを含む新たな環境目標を発表した。

リサイクルPETを一部使用している「DISEL×COCA-COLA」コラボアパレル - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
リサイクルPETを一部使用している「DISEL×COCA-COLA」コラボアパレル

世界の中でも意欲的な目標となっている設計の柱で、ボトルtoボトルの割合を17%から22年までに50%へと引き上げるなどして31年以降は全てのPETをリサイクルPET樹脂か植物由来(バイオ)PETを使用し、新規化石燃料の使用をゼロにしていく。

その効果について日本コカ・コーラの柴田充技術本部QSE環境サステナビリティ部長は「リサイクルPET樹脂を使用した場合、CO2排出量は25%削減されるが、バイオPETは研究段階。商用化レベルで100%バイオPETは実現していない。ボトル成形にはエネルギーを使うが、バイオPET自体はCO2を吸収してつくられているためゼロカウントになる」と語った。

これに加えて軽量化も推進。既に「製品品質の保持では限界まできている」というが30年までに製品1本あたりのPET樹脂の使用量を04年比で35%削減していく。

消費者に対しては適切なリサイクル活動を促す。10月20日の「リサイクルの日」にあわせ、Coke ONアプリ内でリサイクルに関するクイズコンテンツを実施し、全問正解者にオリジナルデザインスタンプをプレゼントする。

10~11月にかけては、日本コカ・コーラとディーゼルジャパンが協業し、コカ・コーラのグローバルライセンス経由でリサイクルPET素材を一部採用した「DISEL×COCA―COLA」コラボアパレルを販売している。

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