森永乳業はこのほど、ビフィズス菌など菌体外販事業の強化を目的とした製造設備の増設計画を発表。第1期として7月から森永北陸乳業福井工場に約21億円を投資して新棟を建設、新規ラインを導入し2020年秋の稼働を目指す。これにより18年度比約2倍(約150t)の生産体制が確立。新中計以降も菌体事業の育成を進め、将来的には18年度比約4倍(約300t)の生産体制を構築する。
販売目標についても18年度の国内菌体市場で41%のシェアを21年度には47%に拡大。海外では5%の占有率を7%とする。21年度の国内外の菌体外販の売上高を18年度比1.8倍まで引き上げる計画だ。
国内については「BB536」などのビフィズス菌に加え、採用実績を積み上げている「シールド乳酸菌」を拡販。海外はビフィズス菌を中心に、現在著しい伸びを見せている北米や中国のみならず、欧州や東南アジアの需要を掘り起こす。
同社では創業直後の1921年から育児粉乳事業を展開し、その研究の過程で69年に健康な乳児の腸内から独自のビフィズス菌「BB536」を発見した。生菌である「BB536」については自社商品の「ビフィダスヨーグルト」などが成果として知られている。また数々の研究を行う中でヒト常在性ビフィズス菌の持つ強みを見いだし、学会などでも発表。ビフィズス菌では整腸作用が期待できる「BB536」以外にも軽度認知症の改善の可能性が研究により示唆された「A1」や、脂肪蓄積抑制作用を確認した「B-3」、低体重児の免疫機能発達のサポートが認められた「M-16V」などを手掛けている。
近年「腸内フローラ」や「腸活」といったキーワードがメディアを通じて大きな話題になり、メーカーによるプロモーションも消費者の認知度向上に寄与した。生菌、殺菌菌体、生産物質などのカテゴリーを問わずそれぞれ機能の異なる菌体が数多く開発され、昨年はハウス食品グループが自社保有する菌体「L-137」で市場に本格参入。「プラズマ乳酸菌」などを展開するキリングループも4月から乳酸菌原料の自社製造を開始した。2社とも現状ではグループ内の製品への利用が中心だが、森永乳業は「BtoBの販売がメーンになる」と外部への菌体供給に比重を置くという明確な姿勢を見せている。
同社ではエビデンスの収集に注力。自社では「加齢に伴う腸内細菌叢の変化」などの知見も得ているが、現在も世界各国で研究が進んでおり、「BB536」だけでも原著論文は160報を超えた。同社では引き続き「独自シーズの開発」「腸内フローラ研究の推進」「各素材のエビデンス強化」に努める構え。
一方、殺菌体の「シールド乳酸菌」は生菌でないがゆえのハンドリングの良さ、設備の洗浄などメンテナンスの容易さ、保存性の良さなどが顧客から評価。現在までに食品メーカーや外食産業、CVSなど延べ300社が採用している。サプリメントや乳飲料、菓子、みそ汁、ドレッシング、パン、納豆、乾麺、パスタなどに加え、業務用分包を追加したことなども奏功し、惣菜やファストフード、ファミリーレストランといった分野での採用も進んだ。