國分勘兵衛 平成を語る〈10〉 卸流通の進化とこれから

難局打破へ協調を 世の中は平成以上に変化

平成期は日本の卸売業が近世以来最大の進化を遂げた時代でもある。特に食品卸は平成の幕開けと同時に物流・情報武装を強力に推進し、流通の効率化を牽引するとともに、サプライチェーン全体のデフレへの耐性を高めた。しかし、主要大手の物流機能が横一線に並んだ平成中期以降は収益確保の道幅を狭められ、その後の物流需給の逼迫と相まって困難な経営を強いられている。縮む国内市場で卸がライフラインとしての持続可能性を高めていくためには、平成後期に部分的に具現化した協調路線を広げていくより他にない。

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――外資系小売業の撤退が相次いだ平成中期以降、「問屋無用論」という言葉をほとんど聞かなくなりました。卸の役割や機能に対する認識もだいぶ深まりました。食品や日用品の卸にとって、平成は近世の問屋成立以来最大の発展期だったのではないでしょうか。

「確かに業界全体の売上げ規模は広がりました。ただ、統計上の事業所数はかなり減っているので、社会変化に上手く対応できたところが残ったということでしょう。既に申し上げてきたように、平成は環境変化への対応が非常に難しい時代でした。わが社の力だけでは小売サイドの急激な変化に追いつけなかったと思います。再編成によって卸全体で世の中の流れに対応できたことが、今日の評価につながっているのではないでしょうか」

――物流面でも小売業の変化に鍛えられました。

「昭和の終わり頃からコンビニ・スーパーを中心に小口多頻度の配送要請が増えていましたが、そうした動きにITを駆使して適切に対応できるようになりました。チェーンストアの専用センターを卸が本格的に受託するようになったのも平成に入ってからですね」

――昭和期の専用センターは大手小売業による自主運営が主流でした。

「そうですね。その頃から製配販の境目が薄れてきたわけですが、垣根を超えた最適化競争を経て、物流については卸に任せるのが一番効率的だという流れになりました。サプライチェーン全体の情報を見ながら調整・最適化を図る卸特有の機能を発揮できたのが大きいと思います。わが社はこれをサプライチェーンコンソリデート機能と命名し、第7次長期経営計画(平成13~17年度)でその強化に取り組みました」

――平成18年〈2006〉、国分グループを含む大手食品卸6社は共通商品マスタ管理会社のジャパン・インフォレックス(JII)を設立しました。コスト環境が厳しさを増す中、重複業務の削減に向けて主要各社がスクラムを組むのは画期的なことでした。他業界ではなかなか考えられないことです。

「JIIは真に機能するプラットフォームになりました。こういう会社を育てることができたのも、日本加工食品卸協会を軸に協調と競争の棲み分けが浸透しているからでしょう」

――そのこととも関連しますが、会長は今年1月の酒類食料品業懇話会の賀詞交歓会で「業界の森を」というメッセージを久々に発信されていましたね。

「人手不足で業界環境が一段と厳しさを増しているので、協調すべきところは協調しましょうということです。既に複数のメーカーや卸による共同配送が活発化していますが、他にも協調できる部分は多いと思います。人口減少社会の中でサプライチェーンの持続可能性を保つためにも、この気運を高めていく必要があります」

――最後に令和時代の食品業界に期待することを。

「やはり、世の中の変化に後れを取らないことです。平成の後半からAI・IoT・ロボティクスなどの先進技術が飛躍的に進化し、ソサエティ5・0という新しい社会コンセプトも提唱されています。それに食品業界はどう対応すべきかと聞かれても、すぐには答えられません。私たちが歩んできた平成時代以上に変化のスピードは速まると思います。その方向をしっかりと見極め、流れに食らいついていくしかありません」

――長時間ありがとうございました。