レンタルパレットの需給が逼迫している。物流生産性の向上に向け、バラ積みからパレット積みへの切り換えが急速に進んでいるためだ。メーカー側でパレットへの積み付けを1アイテムに制限し、そのまま卸側で保管する運用が広がったことで、回転率も低下傾向にある。改元10連休を前に消費財の輸送量が跳ね上がった先月22日以降、業界最大手の日本パレットレンタル(以下JPR)はすべての発注に対して出荷を一律30%カットする異例の措置をとった。連休中に臨時回収を強めたことで、来週中には通常出荷に復帰できる見通しだが、今後も消費財の輸送量が増加する夏場や消費増税前、年末などに不足が生じる恐れがある。
JPR 異例の出荷調整 食品物流に新たなリスク
13年頃に本格化した物流分野の人手不足を背景に、ドライバーの付帯業務削減や庫内作業の省力化につながるレンタルパレットのニーズは年々増加傾向にある。11型標準パレットで約63%のシェアを持つJPRの18年度出荷枚数は、前期比9%増の3千611万枚に広がった(主力プラスチック製の実績)。政府がパレット化を物流生産性向上の切り札に位置づけ、バラ積みが主流の農産品分野でも普及に乗り出していることから、今後も利用に拍車がかかるのは必至だ。
こうした環境変化を受け、JPRは保有枚数の積み増しなどを急ピッチで進めていたが、ここ数か月のオーダーは予想を大幅に上回る15%増で推移。これにGW前の輸送量の急増と卸などからの回収率の低下が重なり、レンタルサービス開始以来初の供給ショートに陥った。
同社は連休直前の先月26日に東京本社で緊急会見を開き、足もとの需給動向と出荷調整の詳細を説明。加納尚美社長は実施中の供給強化策として▽新規調達の強化▽同業4社(国内3、韓国1)からの借用▽回収・出荷拠点間の輸送迅速化――などを挙げつつも「今年度中はタイトな状況が続いてしまう」と事態の深刻さを明かした。
安定供給が困難な背景には、今後も消費増税前の駆け込みなどによる大規模な波動が予想されることに加え、パレットそのものの使い方の変化がある。近年、食品などのメーカー―卸間物流では、卸側の入荷・保管作業の省人化を目的に、1パレットへの積み付けを1アイテムに制限する動きが加速している。これにより使用枚数の増加と回収率の低下が並行的に進んでいる状況だ。JPRのパレット回転日数は25日前後で推移していたが、先の10連休のように卸が在庫に厚みを持たせる局面では、35日程度に延びるケースもあるという。
しかも、こうしたレンタルパレットの需給に関する業界規模の統計調査は今まで全く行われてこなかった。業界団体の日本パレット協会は生産枚数等の年次調査を実施しているが、消費財物流の根幹を成すレンタルパレットの供給力については未知な部分が多い。人手不足の陰でパレットがいつの間にか不足に陥っていたのは皮肉と言わざるを得ない。
JPRは先月26日の臨時会見の後、国土交通省(物流政策課)に足もとの危機的な供給実態を報告。今後は日本パレット協会とも連携し、消費財業界などへの現況の周知を急ぐ。このまま不足が続いた場合、食品・日用品等の生産計画にも影響が出る恐れがあり、国レベルの早急な対策が待たれる。