「うま味調味料」正しい理解を “無添加・無化調“表示が誤解増幅 味の素・西井社長が訴え

味の素社は、このほど「うま味調味料(MSG)の正しい理解と有用性について~食品表示問題による社会課題とは~」をテーマにメディア懇談会を開催した。この中で西井孝明社長は、「MSGの風評被害の歴史と“無添加・無化調”表示」および「World Umami Forum開催について」講演。「MSGの誤った食品表示による社会的ロスを防ぐために、正しい理解の促進に向け、継続的に情報発信していく」と語った。

うま味を代表する物質であるグルタミン酸ナトリウムは、またの名をMSG(Mono Sodium Glutamate)といい、機能を表す表現は「うま味調味料」とされ基本五味として認知されているが、ネガティブイメージを持つ人にとっての呼び名は「化学調味料」となっている。

MSGは風評被害との闘いの歴史で、1920年代の雑誌には得体のしれない物質としてイラストが紹介され、60年代には国営放送が「味の素」という商品名が出せないため化学調味料と命名した。以降、公害問題や食品偽装問題など社会的背景から化学物質への不安と結びつけ化学調味料のイメージがネガティブになっていった。

MSGの風評で蔓延した「無添加・無化調」表示は、アメリカを中心に19年間も続いた安全性論争、化学調味料という名称の災い、化学物質への不信・公害による健康被害などが要因となり「無添加・無化調」の風潮が根付く土台となった。そのため誤った表示が誤解を増幅し、栄養士の認識にも温度差がある。

MSGの活用で病院や学校など施設給食や外食などもさらにおいしくなり、上手に使うとコストは天然だしの10分の1以下、塩分は天然だしの約25%減など利点が多い。過去の名残で使用されている化学調味料は現代社会にそぐわない名称であり、誤った食品表示を蔓延させる主要因となったアメリカで正しい理解を広める活動が開始されている。

昨年9月にはニューヨークで「World Umami Forum」が開催され、アメリカ国内の栄養士や調理師学校関係者、フードライター、シェフなど食関連のインフルエンサーが中心となり参加。「UMAMI発見とグルタミン酸ナトリウムの市場形成の歴史」「中華料理店症候群以降の安全性論争と証明」「うま味レセプター(受容体)の発見」「MSGの有用性の発見」などの情報が発信された。

これらは調理士ネットワークやメディア、SNS、栄養士ネットワークなどにより日本のほか、北米、南米、欧州、アジア、アフリカに発信され、フォーラム開催前後で栄養士のMSGに対する認識が改善した。

また、長村洋一鈴鹿医療科学大学副学長・教授は、「添加物の適正使用と健康管理におけるMSGの可能性」の講演の中で、おいしいと感じさせるグルタミン酸の作用について、「人間はグルタミン酸のうま味を舌と胃腸で感じ、脳に伝達。脳から胃へタンパク質の消化吸収の指令が出て、分解酵素の分泌が促進。分解したアミノ酸が吸収され、免疫力を高め筋肉をつくるなど需要な働きをする」とまとめた。

さらに、二宮くみ子うま味インフォメーションセンター理事は、MSGの有用性について「MSGは世界共通の味であり、どこの国の料理にも使え、手軽においしいものが提供でき、味のバランスを整える」など利点を挙げた。