10日、味の素AGF社の協力により世界文化遺産である京都・上賀茂神社に常設のお休み処「神山湧水珈琲|煎」が開設された。名称は「神山湧水珈琲|煎」。名水・神山(こうやま)湧水で淹れられるコーヒーと同名。お休み処の開設は約2千600年の歴史を持つ同神社初の試みとなる。ここで、ヒノキのベンチに座り景観を愛でながらコーヒーをたしなむことができる。
これにより、広い境内をゆっくり散策する際や結婚式に参列する際の“一服したい”ニーズに対応。9日、完成披露式典で田中安比呂宮司は「例えば13時からの挙式の場合、これまで遠方からお昼前に来られた方たちが休める場所がなかったのが実情。お休み処の開設によって、ご祈願に来られる方も長時間境内で過ごせるようになる」と期待を寄せる。
お休み処は「神山湧水珈琲―煎」が常に体験できる場でもある。同コーヒーは、これまで同神社のイベントや披露宴といった限られたシーンで提供されていた。
AGFの品田英明社長は「日本の中で、日本人に好まれるコーヒーをつくっていくという当社の企業理念を現している」と述べ、文化事業に徹する考えを明らかにした。
世界文化遺産のため、開設には設営場所となった「憩いの庭」の景観を損なうことなく試行錯誤した結果、構想から約4年を要した。庭の風景に溶け込むように、巨大な丸太のように見える直径18mの円形のベンチが置かれる。ベンチは皮つきのヒノキ材でつくられた。
その意図について、設計した建築家の長谷川豪氏は「歴史ある景観に配慮しつつ、どこか現代の新鮮さを持った居場所にしたかったのが一つ。もう一つは上賀茂神社の歴史が感じられるようにしたかった」と説明する。
上賀茂神社の檜皮葺屋根を参考に外側と内側の色調を現代風に対比させた。外側は茶色の皮が一面に広がるようにし、内側はヒノキの白い部分に合わせるように白砂を敷いた。
ヒノキ材は同神社が歩んできた年数と同じ2千600本を使用し、北北西約2㎞にある神山(こうやま)の方角に入り口を2か所設けて歴史にも配慮した。
神山は同神社の名称の由来である雷を分ける力を持った賀茂別雷大神が降り立ったと言われ、神山湧水の源泉となっている。
今後について品田社長は「(お休み処は)われわれにとって一つの道しるべであり、コーヒーづくりの原点になるところで、そういう意義を感じながら、どう膨らませていくかが課題」と語る。
コーヒーは社務所横に設けられたカウンターで提供される。ホットとアイスを用意し価格はともに400円。完成披露式典には、AGFの石川裕取締役副社長執行役員、日本デザインセンターの原研哉社長、京都市の岡田憲和副市長らも出席した。
テープカット後、お休み処で尺八演奏家の藤原道三氏による即興での、こけら落とし奉納演奏が実施された。