リサーチ・アンド・イノベーションの西村まどかさんが、「CODE(コード)」と称するスマートフォンアプリから収集される毎月約30万人の購買データを読み解き、話題の商品について発売後1週間の初動をリポート。今回、取り上げるのはキリンビールの「キリン本格醸造ノンアルコール ラガーゼロ」。以下、西村さんが語る。
はじめに、「ラガーゼロ」の発売前後1週間における、ノンアルコールビールカテゴリ内の金額シェアの変化を確認した(図1)。「ラガーゼロ」の発売前1週間では、同じ脱アルコール製法で先行していた「アサヒ ゼロ」がカテゴリ4位だったが、9月30日の発売後1週間で、「ラガーゼロ」が「アサヒ ゼロ」を上回り、カテゴリ4位に浮上した。(図表下記事続く)

また、「ラガーゼロ」の発売後1週間で、カテゴリ1~3位の上位ブランドのシェアが低下している。このことから、上位ブランドの購入者が「ラガーゼロ」を試しに購入した可能性があると考えられる。
続いて、購入先業態を確認すると、「ラガーゼロ」はカテゴリ全体と比較して、スーパーでの購入が多い傾向にある。さらに、スーパー内でのランキング(金額)を単品ごとに確認すると(図2)、「ラガーゼロ」の単缶が1位となっていた。これらのことから、スーパーで試しに1本購入した人が多かったと考えられる。(図表下記事続く)

一方、ランキング内の商品の顔ぶれを見ると、他の定番ブランドでは6本セットの商品が上位にある。そのためブランドが定着すると、まとめて購入される機会も多いことが分かる。今後、「ラガーゼロ」が定着し、6本セットにも手が伸びるかどうかも注目したい。
続いて、「ラガーゼロ」とカテゴリ全体の購入者層を性年代別に比較した。その結果、両者ともに男性60代・女性60代の売上が中心と、性年代構成比に大きな差はなく、「ラガーゼロ」は既存のノンアルコールビール購入者に受け入れられた商品であることがわかった。
最後に、「ラガーゼロ」の購入者の口コミを確認した。「ノンアルコールビール、ここまで来たかと驚き!」「ビールらしいアルコールゼロビール」といった声が見られ、「ラガーゼロ」のこだわりである“最もビールに近い味のノンアルコール“という特徴がしっかりと消費者に伝わっていることがわかる。
ほかにも、「ラガーの旨みが味わえて美味しい」「ラガーっぽい風味」などの口コミも見られ、単なる“ビールらしさ”だけでなく、ラガー特有の味わいも評価されている。
「ビールらしさ」と「ラガーの旨味」の両者が評価されている「ラガーゼロ」は、ノンアルコールビールにおける新たな選択肢として、広く支持される商品になりそうだ。