亀田製菓の国内米菓・重点6ブランドの1つ「技のこだ割り」が、ビールなどのアルコールに合うおつまみ訴求を開始した昨年8月以降、拡大している。
一度食べたらやみつきになる濃厚な味わいと食感の組み合わせが主要因。
7月24日、取材に応じた佐藤唯国内米菓マーケティング部米菓スナック第3グループ主任は「現在、亀田製菓の米菓ブランドの中でも年間10個以上購入されるヘビーユーザーの割合が多く、リピート率が高いブランドである。」と語る。
「技のこだ割り」の特徴は、素焼きせんべいをあえて割り、割った断面から特製だれをしみ込ませた上に、二度づけでより濃厚な味わいに仕立てた点にある。
「従来の堅焼きせんべいとは一線を画する圧倒的な濃厚さが一番の特徴」と胸を張る。

ただし、「技のこだ割り」が属する堅焼き米菓市場はダウントレンドにあり、売場では長らく埋没傾向にあった。
「2008年の発売開始からしばらくの間は、姉妹品の『堅ぶつ』とともに、お茶うけせんべいとして打ち出してきた」と振り返る。
こうした中、「技のこだ割り」の濃厚さの価値に光を当てたのが、おつまみ訴求となる。
「お客様から“お酒のおつまみにピッタリ”といったお声を頂戴していたことから、当社からもこのような打ち出しをすることで、多くのお客様が、積極的におつまみとして技のこだ割りを選択していただけると考えた」と述べる。
この考えのもと、昨年8月に初のTVCMを放映開始したほか、「濃厚醤油」との既存2品のパッケージを刷新し、ブランド第3定番品として「濃厚チーズ」を新発売した。
おつまみ訴求にあたっては、亀田製菓のお米総合研究所が実施した香気分析をもとに、「濃厚醤油」でビール、「旨辛唐辛子」でレモンサワー、「濃厚チーズ」でワインへとそれぞれ照準を合わせた。

このようなおつまみ訴求が奏功して、「技のこだ割り」の売上高は前期、8月まで前年を割り込んだものの、その後、好転。リニューアル以降の下期(24年10月~25年3月)では10%増を記録した。
これには、「濃厚チーズ」の純増効果に留まらず、「濃厚醤油」と「旨辛唐辛子」の既存2品も貢献。既存2品は、下期8%増となった。
既存2品は今期も好調を維持し、第1四半期(4-6月)では14%増を記録した。
おつまみ需要の獲得は狙い通りだという。
「併買率をみると、『濃厚醤油』ではビールのリフト値、『旨辛唐辛子』ではレモンサワーのリフト値がそれぞれ上がっている。感覚的には、SNSでお酒と一緒の投稿が多くなってきていると思っている」との手応えを得る。

この中で、「濃厚チーズ」では新規ユーザーを獲得。
「『濃厚醤油』と『旨辛唐辛子』に関しては50・60代のお客様がメインに買われている一方、『濃厚チーズ』に関しては全く別のお客様が取り込むことができ、40代の方々が買われている」と説明する。
買い回りでも異彩を放つ。
「濃厚醤油」と「旨辛唐辛子」の買い回りが他の米菓であるのに対し、「濃厚チーズ」については、チーズフレーバーなどのスナックであることが浮き彫りになった。「チーズ好きの新しい若いお客様がブランドにエントリーして下さっている」という。
「濃厚チーズ」の開発にあたっては、23年9月に発売した「お米屋がつくった ぷれっつぇるチーズ」で得られた知見がベースになっている。
「『ぷれっつぇるチーズ』は新規性ゆえに、あまり手に取っていただけなかったが、チーズの濃厚感とチーズが生地に浸み込んだ味の完成度が高く評価されたことから、濃厚としみ込みを体現している『技のこだ割り』の仲間に加えた」と語る。
さらなるブランドの成長に向けて、今後は認知拡大に注力していく。
「今はまだブランド認知度が低いが、技のこだ割りの「こだわり」をしっかり伝えることができればまだまだ伸ばせると考えている。堅焼き米菓市場が伸長しているわけではないため、エンドに露出して急成長させるよりも、米菓の定番売場で回転を上げてファンを増やしていきたい」と意欲をのぞかせる。
認知拡大に向けて、昨年のブランド実績にも寄与し、お客様からも好評だった津田健次郎さんを声優として起用したTVCMの再放映も検討している。
「昨秋の投下で売上効果が確認できた。今年度は昨年に加えて、コンビニ主要層に対してのWEB広告等も検討している」。
CMなどのコミュニケーションでは、二度づけによる濃厚さとともに、堅焼き米菓特有の“ガリボリ食感”も伝えていく。
「姉妹品の『堅ぶつ』も伸長していることから、スナックにはない米菓でしか体感できない堅い食感の良さにに、お客様も気づきはじめている。だからこそ、歯ごたえや食感についてもしっかり訴求していきたい」と力を込める。
ブランドとの接点拡大策としては、今年1月に発売した
「濃厚梅だれ」に続く期間限定商品も計画する。
「濃厚梅だれ」については「スーパー・量販店チャネルでは、梅フェアに多く採用され、これまで『技のこだ割り』を購入されたことのない40代女性との接点を獲得することができた」と振り返る。