ココア市場が値上げによる消費の冷え込みを跳ね返し、販売数量・販売金額ともに拡大している。TV番組でココアの健康価値が紹介されて需要が一気に跳ね上がった過去の動きとは異なり、SNSなどを通じて生活者の間でココアの健康価値がじわり浸透していることが好調要因とみられる。一過性の動きではないため、業界では市場拡大への期待が膨らむ。
インテージSRI+ココア3-7月推計販売規模(金額)によると、ココア市場は前年同期比17.5%増を記録。このうちハイカカオ商品を含むピュアココアカテゴリは47.6%増と高い伸びをみせた。
同期間、ココア市場でトップシェアを握る森永製菓のココア商品計の推計販売規模は39.3%増を記録。その主な内訳は、最大ボリュームの「ミルクココア」が21.4%増。伸び率が最も高かったのは「純ココア」で80.6%増、次いで高い伸び率をみせたのが「カカオの力」で32.6%増となった。
同社は2月、ココア全品を対象に約7~45%の上昇幅で価格改定を実施。金額成長は価格改定効果によるところもあるが、販売個数も上昇基調にあるという。
森永製菓の営業本部営業部食品営業グループ課長の茨野(ばらの)登氏は「価格改定を行うと回転が鈍る傾向が多いため、2月には販売個数の減少も覚悟して実施したが現状、販売個数に関しては間口(飲用層)の拡大により上昇傾向にある」と語る。
さらに、値上げしても数量が落ちない理由としては、「純ココア」などピュアココアカテゴリの健康価値に光が当たり、その脚光や関心が「カカオの力」や「ミルクココア」にも波及しているのではないかと考えている。
「2024年2月頃からココアに関する健康情報がSNSやYouTubeで多く発信されたことで、まず『純ココア』が跳ね上がった。その後、『カカオの力』や『ミルクココア』も好調に推移したことから、SNSメディアへの露出拡大を契機にココア全体への関心度が高まり、需要を後押ししたのではないか」とみている。
片岡物産のココアブランド「バンホーテン」が今年3月1日に実施した価格改定後も販売数量・販売金額ともに伸び続けている。
また、インテージSRI+ココア1-7月推計販売規模(金額)によると、「ピュアココア」は50.7%増、「ハイカカオ72%」が3.2%増、「バンホーテンの腸活ココア」が32.2%増となった。
「値上げ分以上の販売金額を確保でき、ココアの市況は非常に良い。市況は昨年も良く、価格改定後も落ちずに勢いづいているように感じる」(片岡物産)と振り返る。SNSでココアの健康価値が浸透し、「ピュアココア」と機能性表示食品「バンホーテンの腸活ココア」がその受け皿となり成長を牽引したことが大幅増の要因とみられる。
この中で「バンホーテンの腸活ココア」は、“イヌリンが腸内フローラを改善しお腹の調子を整える”をヘルスクレームにした機能性表示食品でありながら、原材料がココアパウダー・砂糖・食物繊維(イヌリン)とシンプルである点が支持を集めている。
(9月5日付本紙に「家庭用嗜好品特集」)