クラシック音楽を牛に聴かせて育てた「モーツァルト牛乳」や、淡路島の特産「藻塩」を使ったプリンが話題を呼んでいる。島内唯一の牛乳処理工場を持つ淡路島牛乳(兵庫県南あわじ市)は、創業以来「文化と歴史を淡路島牛乳にのせて」を掲げ、地域とともに歩む乳製品づくりを続けてきた。
搾乳から製造までの時間が短く、鮮度の高い生乳を使えるのが強み。島内の酪農家から毎日42〜50トンの生乳が集まり、約8割を牛乳に、残りはヨーグルトやコーヒー飲料、焼プリン、チーズなどに加工する。すべて淡路島産の生乳で、他地域の原料は加えない。
乳脂肪分は平均4.0%、無脂乳固形分は約8.85%と高く、冬場にはさらに濃厚になるという。地元の保育園や小中学校の給食にも採用され、地域の食育にも貢献している。
なかでも異彩を放つのが「モーツァルト牛乳」だ。音楽療法に着目した鳥井俊廣社長が、20年以上前にモーツァルトの楽曲を牛に聴かせる実験を始めたところ、牛が落ち着き人懐こくなったのを機に本格導入。現在は契約酪農家で毎日12時間、モーツァルトの約20曲を流して飼育。リラックス効果で搾乳時間が短縮され、乳成分も安定するという。クセがなく、すっきりとした味わいが特長だ。

加工品も多彩だ。「藻塩プリン」は、淡路の特産素材を生かした人気商品。希少糖を加えた甘みと塩味のバランスが光る。藻塩を使ったチーズづくりにも力を入れており、「淡路島カチョカヴァロ」は、国産ナチュラルチーズ最大級のコンテスト「ジャパンチーズアワード」などで2度の金賞に輝いた。同社の製品は南あわじ市のふるさと納税返礼品としても人気で、たまねぎやフグに次ぐ新たな名物になりつつある。
地域では循環型酪農が根付き、同社もその一端を担う。鳥井社長は「いずれはハード系チーズや『モーツァルト牛乳』を使ったカフェオレにも挑戦したい。淡路島の魅力を、乳製品を通じてさらに広めていきたい」と意欲を見せる。