万博で見る未来の“食” 腸活や代替食、健康ケアの最前線

大阪・関西万博の「ヘルスケアパビリオン」は、食と健康をテーマに盛り上がりを見せている。開催から約3カ月が経ち、来場者の関心も高まるなか、7月には酪農乳業専門紙誌が加盟する酪農乳業ペンクラブが現地を視察。オール植物性メニューを展開する六甲バター、ビフィズス菌をテーマにした森永乳業、細胞ケアを切り口に未来の健康像を描く江崎グリコの3社の取り組みを取材した。

六甲バター おいしい植物性をスタンダードに

六甲バターの「QBBこれもいいキッチン」は、オール植物性メニューを提供するキッチンブースだ。「これもスパイシーカツ」や「大阪新名物?!これも串カツ」など、植物性チーズやおからこんにゃくを使ったユニークな料理が好評を博している。6月からはクリームミートペンネ、カツカレー、チーズかつ丼といったボリュームある新メニューも加わり、朝昼2回訪れる常連もいるほど賑わいを見せている。

中尾真範マーケティング本部事業開発部長は、万博を機に「おいしい植物性食品が当たり前」になる未来を描く。「短い梅雨や酷暑、野菜高騰など食を取り巻く環境変化を受け、『食べ物を変える』という選択肢にも目を向けてほしい」と話す。

「QBBこれもいいキッチン」提供メニューの一例
「QBBこれもいいキッチン」提供メニューの一例

新投入の「これもチーたまカツ丼」は、卵・チーズ・カツすべてを植物性で仕上げながら、おいしさとボリュームに定評がある。「茄子とモッツァレラ風クリームミートペンネ」はビーガン仕様のミートソースに、同社の植物性チーズ「Pシュレッド のびーるタイプ」を加えることで、煮込まずにコクとトロミを出した。今後は家庭向けのレシピ提案も強化する。

黒田浄治執行役員マーケティング本部長兼マーケティング部長は「1958年のチーズ製造開始から約70年、社会課題は大きく変化した。本業のチーズを続けながら、万博が掲げる“未来社会の実験場”を機に、新たな食の選択肢で社会に貢献したい」と語る。

「ビフィズス菌でスーパーヒューマン」
「ビフィズス菌でスーパーヒューマン」

森永乳業 ビフィズス菌パワーをVRで体感

森永乳業が展開する「ビフィズス菌でスーパーヒューマン」では、乳酸菌の可能性や腸内環境の重要性を五つの体験型コンテンツで伝えている。特に、VRで腸内の世界に没入できる「VR腸内クエスト」は子ども連れを中心に人気が高く、昼夜行列が絶えない盛況をみせている。

同社は半世紀以上にわたりビフィズス菌の研究に取り組み、人体の腸内に存在するビフィズス菌に関する研究論文は世界最多を誇る。事前申込制の採便検査で自身の腸内細菌バランスを確認できる「ワタシの腸内チェック」は、想定を超える申込みがあり、人々の腸内環境への関心の高さがうかがえる。今後はコンビニなどより身近な場所で腸内チェックを受けられる体制構築も目指す方針で、ビフィズス菌研究を進める。

「細胞ケア研究所」
「細胞ケア研究所」

江崎グリコ 細胞ケアで描く健康長寿の新時代

江崎グリコは「細胞ケア」をテーマに、研究開発の視点から未来の健康像を提案する展示を実施。年齢を重ねても健やかに暮らす「ヘルシーエイジング」の実現に向け、細胞老化の抑制研究を来場者に分かりやすく紹介している。

注目は「ネムノキ」由来成分による細胞老化抑制の研究。同社が保有する約6000種の食品素材ライブラリーから選定し、老化細胞の除去を実証した。展示では実物のネムノキや研究成果が披露され、多くの来場者の関心を集めている。今後は食品として摂取した際の人体への効果解明も進める方針だ。

創業103年の同社は、「食と健康の視点からグリコならではの価値を世界に発信したい」との思いで参加。これまでの“ワクワク楽しい”同社のイメージとは異なる、長年の研究に基づく確かな健康提案が来場者の共感を呼んでいる。