アイスクリーム市場は24年度、売上高6451億円と過去最高を記録した(メーカー出荷ベース、日本アイスクリーム協会調べ)。今夏も最盛期に向けて各社、販促や供給体制の強化に乗り出している。
4月は寒の戻りもあり前年比1%増、5月はGWの連休が飛び石だったことや天候不順で2%減(当社推定)とやや出足に苦戦したが、6月中旬の夏日で需要は一気に加速。特に気温の影響を受けやすい氷菓の動向が注目されている。
氷菓を主力とする赤城乳業、井村屋、フタバ食品は、サンプリングなどの販促活動を強化している。赤城乳業は今夏、在庫水準を前年並みに設定していたが、梅雨入り後の想定を超える暑さを受けて増産に転じた。森永製菓は昨年品薄となった「アイスボックス」などを事前に作り貯め、好調なクリームサンド系商品の増産にも動いている。
近年、アイス市場は複数回の価格改定があったものの金額ベースでは堅調に推移。その裏で「数量の減少が課題」とする声が多い。「5月は前年比98%でも、数量では4~5ポイント下がっている」(メーカー)との指摘もあり、1個当たりの単価上昇が数量減につながっているとみられる。
多くのメーカーが今秋にも価格改定を予定しており、次はノベルティが180円台に達する見込み。「依然100円台で買えるアイスはお買い得感があるが、全体の購入個数は減り“1人当たりの消費の奥行き”で稼ぐ構造に変わっていくのでは」と見る向きもある。
市場全体の数量減にはドラッグストア(DgS)やディスカウントストア(DS)における価格上昇も影響。「昨年秋頃までの価格帯が、数量を維持できる限界だったのでは」とする声もあり販促施策による需要喚起がますます重視される。
赤城乳業は「クリーム系商品は前年を上回っている。猛暑で氷菓が動けば数量でも前年並みを目指せる」とし、気温の後押しに期待を寄せる。
井村屋は「あずきバー」など冷菓需要の拡大を見据え、26年6月に三重県津市で新工場を稼働予定。バーラインを増設し、生産能力を1.3倍に引き上げる。「近年は秋冬も気温が高く、通年での安定供給体制を整える」とする。
フタバ食品は「今後も夏がしっかり暑ければ計画達成は可能。夏場の供給確保を求める声も強く、生産体制を柔軟に調整している」とし、今後の天候を注視する。
