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飲料系飲料ペットボトルはリサイクルの優等生 何度も繰り返しペットボトルに生まれ変わらせる「ボトル to ボトル」で サントリーがけん引

ペットボトルはリサイクルの優等生 何度も繰り返しペットボトルに生まれ変わらせる「ボトル to ボトル」で サントリーがけん引

 市場規模4兆円以上の飲料市場の大半を占めるペットボトルは、リサイクルの優等生とされる。

 その理由として、高い回収率とリサイクル率に加えて、ペットボトルがポリエチレンテレフタレート(PET)の単一素材でできていることと、回収システムが整備されていることから、使い終わったペットボトルを何度も繰り返しペットボトルに生まれ変わせる「ボトル to ボトル」水平リサイクル(以下、BtoB水平リサイクル)に適していることが挙げられる。

 使用済みペットボトルは、単一素材で扱いやすいため、食品トレイや洋服などペットボトル以外の様々なものにリサイクル可能であるが、このように一度ペットボトル以外のものにリサイクルされてしまうと、多くはその後焼却されてしまい、循環の輪が途切れることになる。

 飲料業界では、資源循環と脱炭素という2つの観点からBtoB水平リサイクルを推進。全国清涼飲料連合会は2021年4月、2030年までにBtoB水平リサイクル比率を50%に引き上げることを宣言した。

 以降、飲料メーカー各社の積極的な取り組みと再生事業者(リサイクラー)の設備増強などによりBtoB水平リサイクル量は年々増加している。

 PETボトルリサイクル推進協議会によると2023年度の業界でのBtoB水平リサイクル比率は33.7%。本数換算ベースで3本に1本が新しいペットボトルに再生されている。

細川智弘氏
細川智弘氏

 この動きをけん引しているメーカーの1つがサントリーグループ。同社の国内清涼事業における100%リサイクルペットボトル比率は、本数ベースで2023年から2本に1本以上となっている。また、2024年サステナブル素材使用率は重量比で58%に上る。

 サステナブル素材の内訳は、ほとんどがリサイクル素材で、残り数%が植物由来素材等という構成だ。

 同社は循環型・脱炭素社会に向け2030年までに全てのペットボトルをリサイクル素材あるいは植物由来素材等100%に切り替え、新たな化石由来原料の使用をゼロにするペットボトルの100%サステナブル化の実現を目指している。

 今年の目標について、5月22日、取材に応じたサントリー食品インターナショナルSBFジャパン戦略企画本部の細川智弘氏は「サステナブル素材を24年以上に使用することを目指している」と語る。

 今年、「GREEN DA・KA・RA」ブランドで、100%リサイクルペットボトルの使用を拡大。「やさしい麦茶」(680ml・600ml)と「やさしいルイボス」(600ml)に新商品の「やさしいコーン茶」(600ml)を加えた3アイテム全数量に100%リサイクルペットボトルを使用している。

“100%リサイクルペット使用”と記載しているラベル裏面
“100%リサイクルペット使用”と記載しているラベル裏面

 ラベル側面に“100%リサイクルペット使用”と記載しているほか、二次元コードをあしらった段ボールケースや店頭POPを用意して環境にもやさしい商品であることをアピールしている。

 BtoB水平リサイクルを今後推進する際の課題としては、事業系ルートから回収される使用済みPETの回収時の品質向上を挙げる。

 「街中のリサイクルボックスに飲み残した使用済みペットボトルを投入されてしまうと、液体を運ぶことになり、余計なエネルギーを使って分別しないといけなくなり効率が悪くなる上に、リサイクル工場のライン設備の錆びや故障にもつながってしまう」と指摘する。

 ペットボトル本体がポリエチレンテレフタレート、キャップがポリプロピレンとポリエチレン、ラベルはポリスチレンなど同じプラスチック素材でも性質が異なることから、業界では、ペットボトルをキャップとラベルを取り除いた空っぽの状態にしてリサイクルボックスに入れることを推奨している。

リサイクルボックス
リサイクルボックス

 リサイクルボックスにプラスチックカップなどの異物を入れることは、資源循環に打撃を与える、もってのほかの行為となる。

 たとえばカフェやコンビニで売られるアイスコーヒー用のプラスチックカップに飲み残しや氷が入ったままリサイクルボックスに入れられると、中間処理施設に運ばれ保管される際には回収袋の一部が破れそこから液体が漏れ出てしまったり、食べ残しの弁当箱が入れられた場合には、食べ残しの廃棄作業に加え、異臭も放たれるといった影響がある。

 このような問題の解決に向け、サントリーグループでは、2021年に主に小学校・企業向けの出張授業を開始し、2022年からは、稲垣吾郎さん・草彅剛さん・香取慎吾さんの3人を起用したコミュニケーションを展開して“飲んだあとのペットボトルはゴミではなく資源”であることを伝えるTVCMを放映するなどして使用済みPETのきれいな分別を啓発している。

 小学校では、小学4年生のリサイクルに関する授業の一環として出張授業を行い、その数は現在、延べ約5000人に上る。

 事業者・自治体と協働した水平リサイクルの取り組みも推進している。
 オフィス・スーパー・学校・観光地など多くの生活者が行動する外出先と積極的なタッグを組み、水平リサイクルを開始するとともに独自のリサイクルボックス設置や分別推進を 行っている。

 現在、40以上の事業者と200以上の自治体と協働している。

 環境への取り組みは非競争領域でありながら、競合メーカーとの陣取り合戦のようにも映るが「事業者や自治体との協働は、使用済みペットボトルのきれいな分別の啓発とセットになっていることから、市場全体に流通する高品質な使用済みペットボトルの総数を増やしていくことが大事」との見方を示す。

 加えて「自治体のメリットは、きれいな分別に取り組んだ結果、“こういう形で生まれ変わる”といったようにリサイクルの見える化ができることにあると聞く。“何のために分別しているか分からない”といった住民の声に応えるために、成果物をわかりやすく象徴的に見せることが大事」との考えも明らかにする。

 一例を挙げると、100%リサイクルペットボトルを使用した「GREEN DA・KA・RA」ブランドの「やさしい麦茶」などがこれに相当する。

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