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飲料嗜好飲料おいしく淹れるポイント伝授 「コーヒー教室」70周年 “喫茶文化”を未来へ キーコーヒー

おいしく淹れるポイント伝授 「コーヒー教室」70周年 “喫茶文化”を未来へ キーコーヒー

“同じコーヒー”なのに味が違う?

同じコーヒーを同じようにいれているはずなのに、なぜかいつも味が違ってしまう――。

これはハンドドリップをしたことがある方ならだれもが抱きやすい疑問点だという。

キーコーヒーで「コーヒー教室」室長を務める前田智紗氏は、「ハンドドリップを行う際に押さえたい大事なポイントがある」と指摘する。

大事なポイントとは「しっかりと蒸らすこと」と「器具を温めること」の二つ。

「コーヒーを抽出する際、1投目のお湯は粉全体が湿る程度に中央から外側に向かって渦を描く要領で注いでから20秒ほど蒸らすことで、コーヒーの味を引き出せる。またドリッパーやカップなどの器具を温めることで、飲む瞬間までコーヒーの温度を下げることなくおいしく味わえる」と説明する。

このコツは、簡易抽出タイプのコーヒーにも当てはまる。

簡易抽出タイプの場合、ハンドドリップよりも粉の量が少ないため、蒸らし時間は約10秒。

「コーヒーをいれる度に味が違うと感じる方は、お湯の注ぎ方がその時によって違っている可能性がある。基本のポイントを押さえておくと安定的においしいコーヒーを楽しめる」と語る。

冒頭のような悩みを持つ方からコーヒー初心者、喫茶店の店主まで、幅広い対象にコーヒーの知識や魅力を伝えてきたキーコーヒーの「コーヒー教室」が、今年で開講70周年を迎えた。

「コーヒー教室」は、コーヒー飲用が広まり、喫茶店の出店ブームが始まった1955年に誕生。「喫茶店を始めたいが、正しい抽出方法やコーヒーに関する知識が足りない」という人を対象に、開業支援として開講した。

コーヒーが身近な存在になりつつあった1960年には、NETテレビ(現テレビ朝日)で「コーヒー教室」の放映を開始し、一般消費者に向けた情報発信を行い、コーヒーの普及に貢献した。

2008年には、喫茶店やカフェの店主を中心にしたセミナーに加え、一般向けのセミナーを開始。オンライン配信でのセミナーも行っており、企業の福利厚生などにも利用されている。これまで、延べ37万人以上が「コーヒー教室」を受講したという。

室長を務めるキーコーヒーの前田智紗氏
室長を務めるキーコーヒーの前田智紗氏

「コーヒー教室」が選ばれる理由とは?

コーヒー教室の強みとしては、少人数制セミナーとキーコーヒーならではの連携を挙げる。

通常8人の定員に対し、講師とアシスタントが1人ずつというのが「コーヒー教室」のセミナーの基本の形だ。

「少ない人数にすることでしっかりと学べ、体験できる点が最大の特徴。講師との距離が近く質問しやすいため、日頃の疑問を解消できる」と胸を張る。

セミナーの予約サイトとキーコーヒーの公式オンラインショップが、2023年1月に統合されたことも大きなメリットを生んでいる。

共通のポイントを利用できるため、セミナー申込で貯めたポイントを使ってコーヒーを購入したり、コーヒーを購入して貯めたポイントでセミナーに参加したりと、顧客の行き来がみられているという。

この統合は、セミナーの拡充にもつながっている。

「セミナー参加者がオンラインショップでどのような商品を購入したのか分かるため、その人がどんなコーヒーに興味関心を持っているかが分かる。興味や過去のセミナーの受講経験に合わせて、講師がカリキュラムにアレンジを加え、参加者に合わせた内容にしている」という。

前田氏は講師陣のレベルの高さも特徴だと語る。「コーヒー教室」の講師陣を「コーヒー愛を持ったプロ」と評する。

「コーヒーの抽出技術だけでなく、講師としての心得を持っており、立ち姿一つにまで気を配っている。気に入った講師のセミナーに継続して参加する方や、週に何回も参加する方など、リピーターも多い」と言う。

初心者に人気なのはハンドドリップのセミナー。一方、カフェや喫茶店で働くプロを含む中級者・上級者にはエスプレッソ抽出のセミナーが人気だという。

「初心者向けのセミナーでは、ハンドドリップの基礎だけでなく、ドリッパーの形によって適したいれ方や味の出かたが変わることなどもお伝えしている。マシン抽出などとは違い、自分の好みに合わせた味わいを追求できる点がハンドドリップの魅力の一つ」と述べる。

焙煎を体験「親子コーヒー教室」
焙煎を体験「親子コーヒー教室」

デジタル・リアル両輪で活性化図る

70年の節目を迎えた「コーヒー教室」の今後の目標は、デジタルとリアルの両輪での活発な活動だ。

リアルで開催する「コーヒー教室」においてデジタルに注力する背景には、少人数制ならではのデメリットがある。

「生活者の方と深い接点を持てる半面、多くの方に情報を広めるのが難しい。より多くの方に、きめ細かいコーヒーの情報やコンテンツをお届けしていきたい」と力を込める。

デジタルの活用が奏功している例では、直営ショップの「LINEデジタル会員証」システムがある。会員を対象にLINEで「コーヒー教室」を紹介したところ、LINE経由での参加者が増えているという。

ホームページや公式SNSでの動画配信は、コーヒーのいれ方やアレンジレシピを知りたい人との接点拡大にもなっているという。

リアルの面では、多種多様なセミナーでニーズに応えていく。セミナーによっては、コーヒーのいれ方だけでなく、スイーツとのマリアージュや、季節に合わせたアレンジレシピを提案。夏休みや冬休みの時期などには親子を対象にした「親子コーヒー教室」を開講し、人気を博している。

今年は「70周年特別セミナー」を毎月実施予定。通常のセミナーとは一味違う、今年だけの特別な内容のセミナーを開催する。

1月17日には「コーヒー教室70周年セミナー」、2月25日には「トアルコ トラジャセミナー」を開催した。また、70周年を記念するイベントの実施も予定している。

「3月には、お客様からの要望も多かった『焙煎セミナー』を初めて行った。70周年を機に、今までできなかった試みに挑戦していく」。

新しい挑戦を行いながらも、コーヒーの魅力の発信に引き続き取り組む。

前田氏は「コーヒーは嗜好品。なくても生きていけるが、人の活力になり、生活をより豊かにしてくれるという点では必需品。70年の歴史を受け継ぎ、生活者にコーヒーの魅力を伝える立場としての責任感と向上心を胸にコーヒーの楽しみ方を一人でも多くの方に伝えていきたい」と意欲を示す。

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