8.2 C
Tokyo
7 C
Osaka
2025 / 12 / 04 木曜日
ログイン
English
飲料系酒類「株式会社獺祭」に社名変更 ブランド強化し海外深掘り 将来売上1000億円目指す
2025台湾食品調達商談会 in Osaka by 台湾貿易センター

「株式会社獺祭」に社名変更 ブランド強化し海外深掘り 将来売上1000億円目指す

清酒「獺祭」醸造元の旭酒造は、6月1日付で「株式会社獺祭(英語名:DASSAI Inc.)」に社名変更する。銘柄と社名を一致させることでブランド力を一層強化し、海外展開を加速させる。このほど経営戦略発表会を開き、前9月期の売上高195億円を将来的に1000億円へ引き上げる目標も明言した。桜井一宏社長は「日本で誕生したプレミアムブランドとして世界中で市場を深掘りする」などと語った。

■イベント1000回でファン開拓

社名変更について、桜井博志会長は旭酒造の歴史を振り返りつつ、2000年代前半に自社で製造する銘柄が「獺祭」100%になった時期を述懐。「いずれ社名も『獺祭』に変える必要があるだろうと感じていた」。桜井社長は「4代目蔵元としてなかなか踏み出せなかったが、米国酒蔵(DASSAI USA INC.)が稼働し、世界に向かっていく道筋ができてきた。変えるならいましかない」との想いに至ったという。

桜井博志会長(右)、桜井一宏社長
桜井博志会長(右)、桜井一宏社長

将来目標に掲げた1000億円の内訳は、日本300億円(前期約100億円)、海外700億円(同約85億円=輸出+免税販売)に設定。

足元の需要喚起策として、今年は国内を中心に年間1000回のイベントを実施する。従来の100~150回に比べて一気に増やす計画だ。桜井社長は「獺祭は知っているけど『飲んだことがない』『しばらく飲んでいない』という方が多くなっている。逆に言えば新たな飲み手を開拓できるチャンス」と説明。酒販店、飲食店などの協力も得ながらイベント等で新たな市場を創っていく。

「日本の文化、歴史、精神性などを背景に生まれた獺祭にとって国内のマーケットは非常に大切。グローバル化で世界の市場は1つになりつつあると感じるが、そうなれば日本はなおさら象徴的で重要な場所」(桜井社長)と力を込める。

28年春、本社蔵の近隣に3号蔵が完成予定。製造規模は年間5000石(約90万L)。最高峰に位置付けられる「獺祭 磨き その先へ」以上の高級酒のみを醸造予定。

■日本酒初、アカデミー賞授賞式で提供

海外は日本からの輸出に加え、ニューヨーク郊外の米国酒蔵(23年稼働)を拠点に市場開拓を加速させる。現地生産のブランドとして「DASSAI BLUE(獺祭ブルー)」を展開。24年度の売上は424万ドル(約6・6億円)、販売容量は約11万Lだった。

桜井社長は「新たな飲み手と接点を作る前線基地になりつつあるが、日本酒はまだまだニッチな存在。現状、米国のアルコール市場でシェアはわずか0・2%にすぎない。壁を越えるには様々なアプローチが必要」と話す。

その一環で昨年11月、フランス・パリのレストランで三ツ星を2つ有するヤニック・アレノ氏と共同で居酒屋スタイルの和食店を出店した。25年3月には日本酒初の試みとしてアカデミー賞授賞式の会場で獺祭を提供。世界中の映画関係者らに向け一夜限りの「獺祭バー」を展開する。

足元では消費環境の変化を背景に米国や中国での伸びが減速しているが、「長期的には日本酒の市場はまだまだ上昇トレンドに乗っていける」(桜井社長)と展望。「まずは米国酒蔵での取り組みを3年、5年と成功するまで追求し続け、新しい市場を創っていくことに挑戦する。流通業者に対してSAKEの温度管理(物流・保管など)が重要なこともしっかりと啓蒙していきたい」とした。

関連記事

インタビュー特集

日清オイリオ久野社長 価格改定の早期完遂目指す 家庭用、中長期視点で強化

日清オイリオグループの久野貴久社長は、喫緊の課題として価格改定の早期完遂と、ホームユース(家庭用油)の販売強化に取り組む方針を示した。

J-オイルミルズ春山社長 次元の異なるコスト環境 油脂、価格引き上げ急ぐ

J-オイルミルズの春山裕一郎社長執行役員CEOは、油脂のコスト環境が悪化する中で、「価格改定の浸透を急ぐ」方針をあらためて強調した。

新潟・葵酒造、2年目は自社栽培米で仕込む 「Domaine Aoi」始動 「日本酒になじみがない方にも」青木代表

「飲むことで幸せを感じられるような日本酒を提供していきたい」と話すのは葵酒造(新潟県長岡市)の青木里沙代表取締役。昨年冬、JR長岡駅からほど近い場所に位置する創業160年超の旧高橋酒造から事業を引き継ぎいだ。

カゴメ次期社長 奥谷晴信氏 国内、新たな成長軸を模索 国際、M&Aも視野に成長を

カゴメの次期社長(2026年1月1日付)に内定した奥谷晴信現取締役常務執行役員(一部既報)。アジア事業カンパニーやグローバルコンシューマー事業部、国際事業本部などキャリアの多くを国際事業に携わってきたが、21年以降は国内事業でも手腕を発揮。

ウーケ 花畑佳史社長 パックごはん、第4工場が来春本格稼働 国内外に新規拡大増やす

利便性と品質向上により、年々市場を拡大するパックごはん。最近はコメ価格高騰の影響や防災食への利用増加が相まって、需要はさらに伸びている。

〈持続可能性追求するアイルランドの食料生産〉シーフード編①大西洋の自然が育む恵み 海洋資源の保護に重点

〈持続可能性追求するアイルランドの食料生産〉シーフード編①大西洋の自然が育む恵み 海洋資源の保護に重点