飲料系酒類「株式会社獺祭」に社名変更 ブランド強化し海外深掘り 将来売上1000億円目指す

「株式会社獺祭」に社名変更 ブランド強化し海外深掘り 将来売上1000億円目指す

清酒「獺祭」醸造元の旭酒造は、6月1日付で「株式会社獺祭(英語名:DASSAI Inc.)」に社名変更する。銘柄と社名を一致させることでブランド力を一層強化し、海外展開を加速させる。このほど経営戦略発表会を開き、前9月期の売上高195億円を将来的に1000億円へ引き上げる目標も明言した。桜井一宏社長は「日本で誕生したプレミアムブランドとして世界中で市場を深掘りする」などと語った。

■イベント1000回でファン開拓

社名変更について、桜井博志会長は旭酒造の歴史を振り返りつつ、2000年代前半に自社で製造する銘柄が「獺祭」100%になった時期を述懐。「いずれ社名も『獺祭』に変える必要があるだろうと感じていた」。桜井社長は「4代目蔵元としてなかなか踏み出せなかったが、米国酒蔵(DASSAI USA INC.)が稼働し、世界に向かっていく道筋ができてきた。変えるならいましかない」との想いに至ったという。

桜井博志会長(右)、桜井一宏社長
桜井博志会長(右)、桜井一宏社長

将来目標に掲げた1000億円の内訳は、日本300億円(前期約100億円)、海外700億円(同約85億円=輸出+免税販売)に設定。

足元の需要喚起策として、今年は国内を中心に年間1000回のイベントを実施する。従来の100~150回に比べて一気に増やす計画だ。桜井社長は「獺祭は知っているけど『飲んだことがない』『しばらく飲んでいない』という方が多くなっている。逆に言えば新たな飲み手を開拓できるチャンス」と説明。酒販店、飲食店などの協力も得ながらイベント等で新たな市場を創っていく。

「日本の文化、歴史、精神性などを背景に生まれた獺祭にとって国内のマーケットは非常に大切。グローバル化で世界の市場は1つになりつつあると感じるが、そうなれば日本はなおさら象徴的で重要な場所」(桜井社長)と力を込める。

28年春、本社蔵の近隣に3号蔵が完成予定。製造規模は年間5000石(約90万L)。最高峰に位置付けられる「獺祭 磨き その先へ」以上の高級酒のみを醸造予定。

■日本酒初、アカデミー賞授賞式で提供

海外は日本からの輸出に加え、ニューヨーク郊外の米国酒蔵(23年稼働)を拠点に市場開拓を加速させる。現地生産のブランドとして「DASSAI BLUE(獺祭ブルー)」を展開。24年度の売上は424万ドル(約6・6億円)、販売容量は約11万Lだった。

桜井社長は「新たな飲み手と接点を作る前線基地になりつつあるが、日本酒はまだまだニッチな存在。現状、米国のアルコール市場でシェアはわずか0・2%にすぎない。壁を越えるには様々なアプローチが必要」と話す。

その一環で昨年11月、フランス・パリのレストランで三ツ星を2つ有するヤニック・アレノ氏と共同で居酒屋スタイルの和食店を出店した。25年3月には日本酒初の試みとしてアカデミー賞授賞式の会場で獺祭を提供。世界中の映画関係者らに向け一夜限りの「獺祭バー」を展開する。

足元では消費環境の変化を背景に米国や中国での伸びが減速しているが、「長期的には日本酒の市場はまだまだ上昇トレンドに乗っていける」(桜井社長)と展望。「まずは米国酒蔵での取り組みを3年、5年と成功するまで追求し続け、新しい市場を創っていくことに挑戦する。流通業者に対してSAKEの温度管理(物流・保管など)が重要なこともしっかりと啓蒙していきたい」とした。

関連記事

インタビュー特集

Mizkan フルーティス刷新(後編) 「新・果実体験」を提供 リフレッシュしたい時に

Mizkan(以下ミツカン)は今春、食酢飲料「フルーティス」ブランドをリニューアルした。家庭用では業務用で人気の「シャインマスカット」「あまおう」「白桃」を、家庭用・業務用の双方で「ざくろ」を新発売した。

Mizkanフルーティス刷新(前編) 果実のおいしさが主役の新製法 マーケティング本部 田中菜々美氏に聞く

Mizkan(以下ミツカン)は今春、食酢飲料「フルーティス」ブランドをリニューアルした。

学生が育てるアーモンドの木 明日の社会へ価値循環 デルタインターナショナル×キャンポスブラザーズ

アーモンドの世界的産地である米カリフォルニア州でも、トップクラスの供給量を誇るキャンポスブラザーズ社。日本の販売総代理店を務めるデルタインターナショナルでは、学生の手でアーモンドの木を育てて商品化することを目指す玉川大学の...

原点は休憩中に見上げたキウイ 全国で食材発掘、生産者と企業つなぐ サッポロビールの地域創生事業

 明治9年(1876年)、北海道で新たな産業を興すべく設立された「開拓使麦酒醸造所」をルーツとするサッポロビール。創業150周年を迎える今も、その“開拓”の精神は息づく。ビール会社としての枠にとらわれない発想力を武器に、事業領域拡張の最前線で奮闘する人物に迫った。一次産業を担う各地の生産者と企業のバイヤーをつなぎ、農林水産物の需要創出をサポートするサッポロビールの地域創生事業。その原点は、外食企業のコンサルティングを手がける部署で九州の拠点に配属されていた、一人の担当者のひらめきだった。

カキ養殖の展望を聞く〈前編〉 “殻付き”市場拡大 環境変化と効率化に対応 シーパジャパン・吉本剛宏社長

瀬戸内海で養殖カキが甚大な被害を受け、生鮮市場だけでなく加工メーカーや流通にも影響が及んでいる。こうした中、従来の養殖方法とは異なるシングルシード養殖法が注目されている。