森永製菓はこの秋冬、ココア市場活性化に向け、ココアのトップブランド「ミルクココア」の強化を一丁目一番地の施策に掲げ、8月から大規模サンプリングを実施している。
秋冬ココアの全体方針について、取材に応じた溝井敦営業本部営業部食品営業グループ課長は「『カカオの力』や『純ココア』が好調だが、広く親しまれているのは『ミルクココア』であるため、『ミルクココア』でも前年を上回るようにしていかないと大きな活性化にはつながらない」と語る。昨年のココア市場は金額ベースで微増の着地とみられる。
「森永ココア」ブランドの前期(24年3月期)実績は前年同期比3%減と推定される(出典:インテージSRI+推計販売規模ココア市場、2022年4月~2024年3月)。「昨年3月に『ミルクココア』の減量を行った影響で厳しい状況が続いたが、今年3月で一巡し、新しい規格が受け入れられてきている。ここ3年ほど、市場全体は足踏み状態にあったが、ようやく底を打ち拡大傾向に転換してきている」との見方を示す。
需要期の秋冬に向けて、この流れに拍車をかけるべく、現在、大規模サンプリングを実施している。「しばらく飲んでいない方にもう一度お試しいただくことで、改めて『ミルクココア』の良さを体験していただく」と述べる。
大規模サンプリングでは、1杯分の「ミルクココア」が入った試供品を配布している。配布予定数は、8月から9月の2か月間で48万袋。
大規模サンプリングの一環として、8月20日にはアンテナショップ「森永のおかしなおかし屋さん」の店頭に社員が立ち、道行く人に2000袋を配布した。
配布するサンプルの裏面には、「ココ育」のサイトへのQRコードも掲載しており、親子での飲用を促す。「ココ育」とは、ココアを作ることが食育や親子のコミュニケーションにつながるという考えの下、親子でのココア作りを勧めるプロジェクトのこと。オリジナルキャラクターの「コマグちゃん」を活用して昨秋から訴求している。「今の子どもたちが大きくなったときに、また『ミルクココア』を自身のお子さんにあげるような循環を作るきっかけにしていきたい」との青写真を描く。
中長期的には、ココア事業は健康価値の訴求を強化する。
森永製菓グループの2030年に目指す姿として掲げた「2030ビジョン」では、「2030年にウェルネスカンパニーへ生まれ変わる」というメッセージが発表された。森永製菓グループでは、「ウェルネス」を「いきいきとした心・体・環境を基盤にして、豊かで輝く人生を追求・実現している状態」と定義している。顧客・従業員には心と体の健康価値を提供し、社会には環境の健康価値を提供し続ける状態を目指している。
ココアを含む菓子食品事業でもこの方針に則り、機能性表示食品による体の健康とともに、心の健康に対する価値を引き続き提供する。
「ミルクココア」では心の健康にアプローチしていく。今後は、「ミルクココア」が持つ情緒的な価値を表現したコミュニケーションを検討している。「時代に合わせ、令和のお客様に合うようにブラッシュアップした形で、情緒的価値を伝えることを考えている」と意欲をのぞかせる。