生麺の菊水 生産体制、組織を徹底改革 冷凍麺の輸出にも注力 春名公喜社長に聞く

上半期(4~9月期)は前年比微増で推移し、猛暑で伸びた前年の反動で苦戦するチルド麺市場の平均を上回った菊水。春名公喜社長は昨年6月の就任以来、社内外で抜本的な改革に取り組み、成果を高めている。最近の取り組みについて聞いた。

――上半期の振り返りを。

春名 売上の7割を占めるチルドラーメン群は、前年の反動減や消費者の節約志向による高単価商品の苦戦が影響。そのなかで値ごろ感のある商品が善戦したほか、当社が市場シェア1位の玉ラーメン群が新規チャネルへの採用が広がり好調だった。そばは、発売50周年を迎える「知床」シリーズを全国展開したことで、「知床そば」が伸長。うどんは、春に新発売したレンジトレータイプの簡便商品が想定以上に良かった。焼きそばは、アッパーゾーンの2食入り商品が貢献したほか、北海道内で販売する業務用が週末のBBQ需要や総菜売場で採用されて2割以上増加。ラーメン以外が健闘して全体をカバーしている。

――繁忙期の生産集中を減らすための、平準化の取り組みについて。

春名 限られた製造キャパのなかで、何を売り、育てるのか、選択と集中に注力している。比較的余裕があるラインで生産する商品や、№1シェアの玉ラーメンの販売を強化。また来春には、これまで開発を進めていた冷凍生ラーメンの販売を開始するが、保存がきくため繁忙期以外に生産して平準化をいっそう進めることができる。またラインごとの原価計算を見直し、自社では効率を高めた設備で省人化を図り、量産を徹底。外部委託を増やして小ロット製品を生産してもらっている。

――グループのシナジー効果は出ていますか。

春名 国内の営業活動は、道内は当社単独で行い、道外は伊藤ハムや米久と連携しながら取り組んでいる。概ねうまく活用できているが、一点失敗だったのは、米久が強い精肉部門で麺を営業してもらうことはマーケティングエラーだったと反省している。道内の総菜売場で焼きそばが売れた例があり、道外でも惣菜売場への営業を強化して再チャレンジしたい。輸出は伊藤ハムを通して「寒干しラーメン」の商談を行う。年末から年始にかけて成果が出てくる見通しで、前述の冷凍生ラーメン、生そばも海外展開する計画だ。

――社内改革を進めていますが、進捗状況を。

春名 「生産改革」「購買改革」「人事制度と組織の改革」「ビジネスプロセスの改革」を掲げて進めるが、改革のスピードと責任所在の明確化が鍵になると感じた。これまでの組織は、組織のトップが同じ部署に長く就き、兼任も多く、判断が一極集中型になっていた。ある程度現場で判断できるように組織を組み換え、新たに設立することで連動性を高めた。評価制度や福利厚生も見直して、社員一人一人のキャリアプランを一緒に考えながら、満足度とエンゲージメントの向上に努めている。

――就任して1年が経ちましたが、改めて感想を。

春名 協力企業とコミュニケーションを図り、皆さんの工夫を参考に取り入れることで生産キャパを生み出すことができた。麺関連具材やスープの新しい提案も増やしてもらっている。6月には仕入れ先を対象にした事業説明会を実施。当社ビジョンを伝えて積極的に情報提供をしたところ、4つの改革が一気に進み始めた。協力企業を大事にしながら改革実行を加速化したい。また実際に改革を遂行するのは社員になるが、スピードをもって物事を進められるように変わってきたと感じる。12月に当社は創業75周年を迎え、特に20~30代の若手社員には将来の企業の在り方について考えてもらう機会にし、皆で考え意見を出し合いながら次世代の菊水をつくりあげていきたい。