令和6年能登半島地震で能登の酒蔵11社(鳳珠酒造組合)すべてが被災したが、各社から救出した原料米を使用しての酒造りの場の提供と支援をしてきた石川県内の酒蔵が、「石川の地酒を守る」(福光屋・福光松太郎社長)強い思いで仕上げた共同醸造酒がこのほど完成し、地元や東西都市圏の百貨店やスーパーに並び始めた。売上は能登の酒蔵復興に活用される。
支援したうちの1社、福光屋の福光社長は「能登の現地の復興はまだまだだが、商品が完成したことは一歩前に踏み出せたと思う」と前向きに語った。
同地震により能登の酒蔵11社は、5社が全壊、6社が半壊と全社の地酒作りができない状況になった。それでも使える原料米はあり、それを救出米として活用すべく能登の酒蔵の「なんとかお米だけは助けたい」との思いを受け、同じ石川県内の酒蔵が立ち上がった。
能登の11社のうち5社ほどは、他の石川県内それぞれの酒蔵の設備を借りて共同で醸造し、両蔵の技術や酵母、原料米を合わせた特別な日本酒が出来上がった。
奥能登の老舗酒造・鶴野酒造店と支援した金沢市の福光屋は、約120日間にわたり初の共同醸造を行った。鶴野酒造店の損壊した蔵から今期の仕込みに使う約2千㎏の救出米を使用し、両蔵の酵母を使用して2杜氏がコラボ酒に挑戦し完成した。商品名は純米大吟醸「鶴と福」(720㎖税込5千500円)で、6月25日発売し2千900本限定。また、両蔵の代表銘柄「谷泉」(鶴野酒造店)と「加賀鳶」(福光屋)を1対1でブレンドした純米吟醸生貯蔵酒(720㎖税込2千750円)は、7月2日発売の5千200本限定。
その他、能登・輪島市の中島酒造店(代表銘柄:能登末廣)は、小松市の東酒造(神泉)と、能登・珠洲市の「櫻田酒造」(能登大慶)は、白山市の車多酒造(天狗舞)とそれぞれ共同醸造を行い、新たな商品を発売している。