「チリの和食レストランはわれわれの日本酒を『待ってました』とばかりに大歓迎してくれる。地酒にとって南米はまだブルーオーシャン。正しい情報とおいしいお酒を届けていけばチャンスは広がる」と南部美人(岩手県二戸市)の久慈浩介社長は力説する。
進出のきっかけはチリで開催された「カタドール・コンペティション」の「SAKE部門」だ。ワインを中心に南米でもっとも影響力の大きい品評会とされるが、日本酒に特化した部門が2021年にスタート。昨年は清酒「南部美人」が「純米大吟醸 心白 山田錦」で最高金賞、「特別純米酒」で特別金賞を受賞した。出品は27社54点(梅酒、ジンなど含む)。久慈社長によると、数年前からチリへの輸出を模索していた折、受賞後に現地で日本人唯一の日本酒インポーター、ハロスール社と接触。アメリカの冷蔵倉庫からリーファーコンテナで出荷するルートを確保できたという。
チリで「南部美人」の評判は上々だ。久慈社長は「人気の和食レストランは非常にレベルが高い。海鮮料理やラーメンなど日本とまったくそん色ない。そうしたお店こそ良質な地酒を求めている。ただし現状は銘柄が限られ流通量も少ない」とし、「日本酒の輸出は欧米やアジアに目が向きがちだが、南米の将来性に大きな可能性を感じている。蔵元自らが価値を伝えて回り、新たな市場を創っていきたい」と意気込む。
一方、SAKEマーケティングハウスの松崎晴雄代表取締役も南米市場の有望性に太鼓判を押す。経済成長を背景にした潜在需要に加え、「食材が豊富で日本酒と親和性がある」「公用語はスペイン語が主流で伝播が早い」「日系人が多く親日的」などを理由に挙げた。
23年の日本酒輸出額はブラジルが約2億円、チリが約500万円。後者は小規模ながら、リッター単価が932円と高いことが特徴。
「純米酒など特定名称酒が中心とみられる。まずは富裕層のマーケットに入っていくことが重要。和食店から南米料理店、フュージョン系へと訴求を強化していければ」(松崎氏)。
なお、本年の「カタドール・コンペティション 2024」の「SAKE部門」は、10月11日まで出品を受け付ける。審査にはチリや欧米のワインソムリエ、バーテンダーのほか、新たに松崎氏らも参加する。結果発表と授賞式は11月23日に予定。これらの開催にあわせ、チリで日本酒セミナーや試飲会なども行う。出品にあたっては、登録手続き、出荷手配、現地事務局とのやり取りなどをBe-Bridger社の小泉和貴代表がサポート対応可能。