酒税率引き上げの逆風にさらされる新ジャンル酒類。ビールなど他カテゴリ―への需要流出による市場縮小から、ブランド淘汰への圧力が強まる気配だ。そんななか「金麦」が善戦を続けるサントリーでは、生き残りへ新たな戦略を打ち出した。
昨年10月の酒税改正後に「発泡酒②」と分類変更された、いわゆる新ジャンル。今年も6月までの市場は前年同期比79%と激減(サントリー推計/以下同)した。またビール類(缶)市場のうち20年に32%を占めた狭義ビールは、昨年には39%に拡大した。
「エコノミービールからビールへの回帰が進み、(酒税改正が完了する)26年以降もこの流れは活性化するだろう。その後は不透明だが、30年の時点でもエコノミーは50%弱の規模で市場に残り続けるとみている」。
7月8日のビール事業マーケティング説明会で、サントリー常務執行役員ビール本部長の多田寅(すすむ)氏が見解を述べた。
「金麦」は、この上期も91%と市場を上回る健闘。業界では狭義ビールへの戦略傾注が続くなか、今年に入り〈糖質75%オフ〉やブランド本体を相次ぎリニューアルするなどのテコ入れ策が奏功し、顧客接点が強化された結果とみる。
「2杯目」の需要も獲得へ
下期はエコノミーカテゴリーに目を向けるきっかけを「金麦」から提案。生活者のエコノミー需要を引き出す。
目玉は「金麦サワー」。その名の通り、ビール醸造技術で実現したサワー感覚の金麦だ。独自の「旨味麦芽」とともに、希少なレモンドロップホップとシトラホップを使用することで、麦のやさしいうまみと柑橘系の爽やかな香りを調和させた。
4月にエリア限定で発売した北海道では、RTDやビール類からの需要流入をつかみPOSデータでも上位にランクイン。ユーザーからも好評の声が寄せられたといい、10月から数量限定で全国発売する。
「ビール類と(缶チューハイなど)RTDを併買するユーザーは、昨年には5年前の1.5倍に増加。お客様との接点が最も多い『金麦』で、RTDが担っている2杯目の需要もしっかり取っていきたい」(多田氏)。
また「金麦」では季節ごとに味わいを変え、四季ごとの提案で食卓を演出してきた。今年は新コンセプトを取り入れる。
9月に発売する〈帰り道の金木犀〉は、秋の夕暮れにキンモクセイがふわっと香るシーンを思わせる、甘く爽やかな香りのアンバーエールタイプ。季節のワンシーンを商品名に盛り込み、ブランドへの興味を喚起する。
同社ビール類トータルの上期実績は95%と市場を2㌽ほど下回ったのに対し、通期計画は100%とやや強気だ。
多田氏は「チャンスの兆しは見えており、まだまだ『金麦』でマーケットを活性化できる」「大票田の『金麦』にしっかり取り組んだうえで、『プレモル』や『サントリー生ビール』もさらに磨く」と、通期での巻き返しへ意気込みをみせた。