10月からの酒税改正をにらみ、動きが活発化する酒類市場。サッポロビールでは、追い風が強まるとみられるビールとRTDで新たな提案を行う。
「ビール減税、新ジャンル増税により、店頭でも価格差が縮まると想定される。20年の酒税改正時も、想定を上回る新ジャンルユーザーがビールやRTDに動いた。特筆すべきは、RTDの容量構成比が新ジャンルを逆転したこと。ビールとRTDには大いにチャンスがある」。8月23日の発表会で、同社常務執行役員マーケティング本部長・武内亮人氏が表明した。
「糖質ゼロ」などゼロ系商品が活況を呈するビールカテゴリーから10月17日に発売するのは、日本初の糖質・プリン体70%オフを実現した「サッポロ生ビール ナナマル」。「ゼロ」ではなく、あえて「オフ」の機能系ビールだ。
ビール類では「ゼロ」「オフ」商品の約9割が発泡酒・新ジャンルであることから、この分野ではビールの伸長余地がまだ大きいとみる。
ビールに多く含まれるプリン体は、過剰摂取すると尿酸値過多や痛風の原因となる成分。ビールユーザーへの調査では、体への負担を気にするものとして糖質、カロリーと並ぶ結果になった。ビールへの関心が高まる酒税改正を機に、潜在ニーズ発掘を狙う。
なぜ、ゼロではなくオフなのか?
「両者のユーザー意識には明確に差があり、似て非なるニーズがある。ゼロ系ユーザーはストイックで、健康や数値的なものへ関心が高い。オフ系ユーザーは、体を気遣いながらもビールライクな味わいを楽しみたいという意識が強い。そちらのお客様を狙っていきたい。」(ビール&RTD事業部長 永井敏文氏)。
缶チューハイに「スパイス」新機軸
新ジャンルからの需要流入が加速すると見込まれるRTDでは、コアな飲用シーンである食中需要の開拓へ新機軸を打ち出した。
9月12日発売の「サッポロ クラフトスパイスソーダ」。8種のスパイスを使用し、炭酸の心地よい刺激と無糖の甘くないおいしさを実現。レモンをはじめ果汁系が大半を占める缶チューハイ市場へ、これまでにないスパイスフレーバーを提案する。グループ企業のスパイスメーカーであるヤスマとのタッグにより開発した。
スパイスの風味が食事を引き立てる。
「たとえば生姜焼きは、コクのある甘辛いたれと一緒に楽しんでもらうと相乗効果が期待できる。また麻婆豆腐は、花椒のピリッとした味わいとよく合う。缶チューハイではこうしたマリアージュの試みはまだ珍しく、新しい価値提案だ」(永井氏)。
主力ビール「サッポロ生ビール黒ラベル」の販売数量は7月まで前年同期比113%と絶好調。生のうまさと独自の世界観を継続訴求し、リアル体験の場やデジタル施策も積極投入。若年層を中心とした新規ユーザーの獲得を進める。
もう一方の柱であるプレミアムビール「ヱビス」はスタンダードビールと比べると若干出遅れているといい、各社が強化するスタンダード系と高価格帯との同質化が進んでいることが要因とみる。
ヱビスの新ライン「クリエイティブ・ブリュー」から第2弾として、オレンジピールを使った「ヱビス オランジェ」を10月11日から期間限定で発売。来年4月に開業予定の「ヱビス・ブリュワリー・トウキョウ」(東京・恵比寿)を中心とした情報発信も強める。