大阪大学、伊藤ハム米久ホールディングスなど5者は3月29日、「培養肉未来創造コンソーシアム」設立を大阪府吹田市の大阪大学で発表した。培養肉食用化の実現を目指し、まずは25年の大阪・関西万博での展示に向けて協業する。
5者は23年1月に「3Dプリントによる食用培養肉技術の社会実装」に向けた協業契約を締結した。培養肉は、伊藤ハム米久が提供する和牛由来の食肉細胞を用いる。大阪大学などの細胞加工技術と3Dプリント技術で培養肉を作成し、伊藤ハム米久などが食味や品質の評価を行う。
伊藤ハム米久HDの小山剛上席執行役員は「世界人口増によるタンパク質需要増においても、安定的に食肉供給を図る責務がある。そのためにタンパク質の供給の多様性を検討することが重要な課題。消費者の選択肢を広げ、社会課題を解決していきたい」と語った。
協業の中心となる大阪大学の松﨑典弥教授は「技術を研究にとどめるのではなく、社会実装が最終目標」とし、将来的には培養肉商品を消費者に届けるまでの物流、販売を伊藤ハム米久HDが中心となり担うことも描いている。
松﨑教授は「万博で試食を検討している。技術的にはできると思うが、法規制がクリアになれば」と話し、和牛を選んだ点では「日本が誇る重要な資源。海外でも和牛の認知度は高いので将来的な代替として社会により貢献できる」とした。
同コンソーシアムは大阪大学吹田キャンパスのIOCプラザにあり、伊藤ハム米久からは中央研究所の2人が常駐する。
コンソーシアム設立経緯は、17年に大阪大学と凸版印刷がヒトの細胞で3次元培養技術研究に取組み、その技術を動物細胞に置き換えることで培養肉研究を開始。21年8月に筋・脂肪・血管という異なる線維組織を3Dプリントで作製・統合する技術で論文発表し、その後、島津製作所、伊藤ハム米久が加わり今回の発表に至った。5者は大阪大学、島津製作所、伊藤ハム米久HD、凸版印刷、シグマクシス。