三菱マテリアルは2月28日、国内ファンドのIAパートナーズ(以下、IAP)が管理またはサービス提供を行う「IAパートナーズ1号投資事業有限責任組合等」にダイヤソルトを売却すると発表した。同社は95%保有していたダイヤソルト株式すべてを、三菱商事も保有している株式5%を3月31日に譲渡する。IAP、ダイヤソルトも同日付で情報開示したが、国内製塩大手の株式譲渡は塩業界に強い衝撃を与えている。
ダイヤソルト株式を100%保有することになる「IAパートナーズ1号投資事業有限責任組合等」は、「大企業や中堅企業のグループ会社や事業部門のカーブアウトを支援し、経営基盤の強化、M&A等施策を通じてポテンシャルを開花させる」ことを投資目的に、昨年3月31日に設立された。
三菱マテリアルは今回の株式売却について、「事業ポートフォリオの最適化の一環であり、IAPによる経営および資金支援での運営が最適」としており、IAP担当者も「製塩だけでなく、新しい製品開発などで事業成長を図るとともに、脱炭素等の課題にしっかり対応し、中長期的に成長を持続できるようにしていきたい。投資期間は5年前後を目安としている」とコメントしている。
ダイヤソルトは塩事業センターにも製品を納入する国内製塩大手。ナイカイ塩業、鳴門塩業とともに日本塩工業会を構成するメンバーの一社でもある。専売制時代から、有事に備えた塩の備蓄や国内塩の自給率維持などで貢献してきた。4月には福岡市への本社移転を控えているが、今回の売却については、ファンドからの役員受け入れを発表したのみ。事業内容、社名についても変わりないとしている。
国内製塩業は現在、塩需要が漸減するなかで使用エネルギーである石炭価格の異常な高騰で業務用塩を2度にわたり価格改定するなど、商環境が厳しさを増している。またカーボンニュートラルに対応した使用エネルギーの転換を目前に控えており、数十億円の設備投資が必要だ。今回の株式譲渡も塩業界の事業環境が背景にあることは否定できない。
約90年にわたる専売制時代から、塩の販売が自由化された現在に至るまで、塩産業は専売公社(現在は塩事業センター)、日本海水を含め国内製塩大手、塩元売の三者がそれぞれの立ち位置で業界地図を形成してきた。
IAPが外資ファンドではなく、大手銀行、産業革新投資機構などが出資者に名を連ねるファンドであることで業界内には安堵とともに、塩業界の新たな発展に向けた取り組みへの期待が高まった。使用エネルギーの転換など大型設備投資についても、ダイヤソルトとIAPとのタッグにより、カーボンニュートラルに向けた取り組みの推進が期待される。