全国の海苔生産高に対して買付け金額・枚数ともに約30%のシェアを持ち、業界トップの売上高を誇っている。業務用販売からメーカーへの原料卸、小売まで幅広く大規模な仕入れを行うため、毎シーズンの動向が注目される。21年度漁期の総括や業界の将来について白羽洋社長に聞いた。
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――21年度漁期の品質、数量はいかがでしたか。
白羽 当初は今季の海況などを踏まえ、生産枚数は「60億枚割れ」も予測していたが、2月後半から3月にかけて数量が膨らんだ格好だ。3月以降は相場も安定してきたので、全体として必要な分は確保できた。やはり不作よりは数量が採れるシーズンの方がいい。しかも、品質がいいので末端消費の動きにもプラスに働くだろう。瀬戸内海の相場は昨季よりも高いと思うが、下物は例年になく価値のあるものだった。例年以上に自信を持ってお客様に売り込んでいきたい。
ひと昔前は生産量が60億枚台なら、社内で「すべての海苔を買わなければいけない」と号令が出るほどだったが、今はそうした雰囲気がない。しかし、問屋として原料の販売もしているので年間分の必要量は手当てしなければならず、昨年並みに仕入れた。特に上物は中元・歳暮などの贈答や新しくEC向けなどで定期的に注文をいただいている。在庫を持つリスクはあるが、必要に応じた買い方をする企業が増え、仕入れの方法が変化しているように思う。
――コロナ禍が3年目を迎え、販売動向に影響を与えています。
白羽 コロナ禍の先行きが見通せず、多くの企業が仕入れに慎重にならざるを得ない状況が続いている。しかしコロナが終息し始めれば、一転してランチ需要などが回復し業務用やCVS向けは回復傾向になるだろう。品質がいいものには値打ちがある。例えば、高い品質の海苔1枚を使ったことで「その寿司の価値が飛躍的に向上した」という声をもらっている。こうした海苔の利用シーンはほかにもあるはずだ。いかに海苔の価値を提案していくのかが重要になる。
かつて国内の年間消費は100億枚と言われ、高価格帯は30%程度売れていたが、近年の消費枚数は80億枚前半で高価格帯商品はその3%ではないか。消費を90億枚に盛り返すことができれば市場は活性化するだろう。1、2回摘みを食べたことのある日本人は絶対的に少ない。海苔のおいしさや栄養がある良さを広く訴求していきたい。
――価格改定や消費拡大について、どのように見ていますか。
白羽 仮に値上げをするとしても、価格改定のみを実行したら消費が落ち込むのは間違いない。増量は各社で様子を見ながらの対応になると思うが、業界全体を考えると海苔の消費枚数を増やしていくことが大切だ。短期的に加工メーカーの利益を圧迫する形になるが、中長期的に考えて対応した方が良い。
食料品や光熱費などあらゆるものの値上げが相次ぎ、消費者は生活防衛に走ることになる。すると、必要品以外は買わなくなり、本当に価値のあるものだけを選ぶようになる。「ごはんのお供」といえば海苔だけでなく、漬物や納豆、佃煮、ふりかけと、さまざまなほかの食材があり、海苔業界の中だけでなくこうした食材と競争しなければならない。