尾家産業は19年3月期に売上高1千億円を達成したが、コロナ感染拡大の影響を受け20年3月期は減収減益となった。第3四半期までは好調に推移していたが、2月の最終週から影響が出ており、単月売上げは2月が前年比97%、3月71%、4月は42%と大きくマイナスした。
同社は取引額の増減した上位100社・下位100社を集計している。例年上位100社の合計で60~70億円のプラス、下位100社で25~30億円のマイナスとなり、差し引き35~40億円の増収となっていた。しかし前期は上位100社で53.7億円のプラス、下位100社で89億円のマイナスとなり、差し引き約35億円のマイナスが減収の大きな要因となった。
1月から3月にかけて開催する春季提案会は、コロナ感染拡大により5会場で開催できず11会場での実施にとどまり、通常の営業活動も限定されているため、新商品情報がユーザーまで伝わっていない部分がある。19年秋季提案会では全国14会場で延べ約6千600人が来場。3月までで提案会による増収効果は約14億円と前年を5千万円上回る効果があり、春季提案会が一部開催できなかった影響が懸念される。
12日の決算説明会で尾家啓二社長は「20年3月期が減収減益という結果になったのは非常に残念だ。コロナの終息は見えないが、終息後の外食のスタイルは変化する。また、外食ユーザーも再開後にさまざまなことを手掛けようと考えている。早くヒアリングして、どういうことを計画しているのか、何に協力できるのか、ユーザーの声を聞いてそれにマッチするようにしないといけない。またビアガーデン業態にも注力しており、昨年まで100か所前後との取引があった。これから本格的なシーズンを迎えるが、早い時期に再開できることを期待している。21年3月期については、市場の見通し経営環境が読めない。事業所のリニューアルも期中に2か所ほど実施したいと考えているがまだ未定だ」と説明した。
テイクアウトを導入する飲食店も増加している。新たに導入する場合、店舗で提供していたメニューをそのまま提供するのは困難。そこで、中食との取引がある同社には、人気食材に基づく提案などできることが多い。
さらに外食店を支援する動きとして、SNSで外食店のテイクアウトメニューを紹介する「尾家外食応援団(仮称)」を近く立ち上げる。仕入先にも協力してもらい、外食店のおいしいメニューを同社のインスタグラムやフェイスブックで紹介する。
なお、決算説明会では、5つの重点項目〈ヘルスケア、中食、PB、宿泊、ノンフーズ〉について、坂口泰也取締役営業本部長が次のように語った。
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ヘルスケア業態はコロナの影響は少なく、売上げは132億円で前年を下回ったが、大手ユーザーとの取引解消分を除けば前年比8%増。これまでメニュー軸の提案が多かったが、機能性食品の導入などにより提案の内容が向上し利益率も3.5%程度改善できている。中食業態はほぼ前年並み。仕出し弁当の比重が高かったが、量販店惣菜にも取り組んでいく。家庭用の延長的な部分もあり、付帯業務も多く簡単ではないが、母数の大きい業態でありCKからチャレンジしていきたい。
PB商品の強化では、販売金額は前年を下回ったがPB構成比は上がった。前期はPB新商品15品、リニューアル品17品を発売。栄養素を添加したり糖分や塩分を制限した『やさしいメニュー』ロゴ入りPB商品は20品まで拡充している。
宿泊も前年比99%だが、3月以降が大きくマイナスした。ホテル朝食も従来はビュッフェスタイルでの提供が多かったが、定食形式にするなど新しい生活様式に合わせた提案を行う必要がある。
ノンフーズは前年並み。外食向けの洗剤が中心だったが、ヘルスケア部門で衛生関連への関心が高まっていることや、飲食店のHACCP義務化で外食ユーザーでも衛生への関心が高まっている。