コメ対策急ぐ政府 一次産業の共通課題に目配りを

「若手が70歳を超えた」。水産加工業の社長が話していた。琵琶湖の魚を原料とするこのメーカー。昨今は不漁が続き、原料不足に悩む。環境変化とともに、漁師の高齢化がその一因。

▼数年前、瀬戸内で同様の話を聞いたのを思い出す。小魚が取れなくなり佃煮メーカーがやむなくそれを使った商品を終売した。「取れないものはどうしようもない」と嘆いていた。同じころ、海苔メーカーの幹部が「今はいかに販売先を広げるかで悩んでいるが、そのうち原料を手に入れるのに苦心するようになるだろう」と危惧していた。その不安は、思っていたよりも早く現実のものとなった。

▼第一次産業を取り巻く課題を、消費者も店頭価格の高騰という形で実感している。コメの高騰がそれに拍車をかけた。こうした中、農水省は今年度の主食用米の生産量が増加する見通しを発表。価格上昇による、生産者意欲の高まりが背景にある。

▼政府は目の前の価格抑制策を急ぐが、継続的な安定供給につながる政策を両立できるかが問われる。そして、問題を抱えるのは米農家だけではない。

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