梅の全国的な不作に見舞われた2024年から1年、降雹による2年連続の不作が不可避となってきた。梅生産量第1位の和歌山県では、主力品種「南高」の未成熟花が昨年の半数ほどと例年通りで、一時は良好な作柄が期待された。
だが、4月6、11、14日に強い寒気が流れ込み、3度にわたって紀南地域に降雹。落果や雹傷などの被害を受けた。和歌山県の発表によると、主要産地の田辺市とみなべ町を始め、計9市町村で4,300ヘクタール、47億7,832万9,000円の被害となった。
梅生産第2位で、「白加賀」を主力品種とする群馬県も、和歌山県と同様の経過をたどっている。同月11日とその前後に3度、主要産地である高崎市などに降雹。JA全農ぐんまによると、同月23~25日に実施した着果調査では3割以上の果実に傷がみられたとのことだ。
雹傷自体は味や香りに影響ないものの、果実の成長に合わせて傷も広がっていくことから、見た目への影響は大きい。梅の等級はA級、B級、C級、格外に分けられるが、雹傷を受けた梅は、「雹傷果」「傷果」などと呼ばれ格外扱いとなり価格がA級の3分の1~5分の1ほどに落ちる。昨年のような大凶作では、数少ないA級品の価格高騰で10分の1以下になることも。傷からの病原菌侵入を防ぐため、消毒の実施が必要になる場合があるなど、農家への負担も増加する。多くの農家は不作に備えて農業保険に加入しているが、前年度の収入に応じて掛金が決定するため、収入減が続くと受け取れる保険金の額も減少する。
生産者を守るためにメーカーは商品の価格改定を実施せざるを得ない状況だ。だが、紀州の梅加工メーカーでは昨秋から今春にかけて20~25%の値上げを実施しており、度重なる値上げによる消費者離れが懸念される。
今年も不作となると少ない国産原料を複数の加工業者が争うことになるが、必然的に資金力のある大規模メーカーに集中し、小規模メーカーは原料を入荷できなくなる。そうなると経営悪化から倒産や大手メーカーへのM&Aが進み、メーカー数減少で製品が画一化、紀州ブランド価値の低下を招く恐れがある。紀州では多数の小規模メーカーが独自性のある商品の開発に取り組んだことで、梅という一つの素材から様々な商品が誕生。市場拡大し紀州梅ブランドを確立した背景がある。ブランド価値を、そして一大産地を守るためには、各社が安定経営できるような土壌づくりをし、会社の数を減らさずに産業を継続していかなければならない。
令和に入って凶作はすでに2度起きている(同2年、6年)。気候変動も進んでいる以上、救済措置ではなく雹傷果の価値向上を含め、持続可能な農業生産を検討していかなければならない。梅酒や梅ジュースなどに加工する場合、果皮の傷は問題にならない。梅干やカリカリ梅でも日常消費であれば何ら支障はない。産地保全には雹傷果の価値向上が必須だ。行政・業界が一体となり、消費者に「傷があってもおいしい梅」の理解を促す取り組みが待たれる。
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