「春の海 終日(ひねもす)のたり のたりかな」。天橋立がある京都北部宮津湾の阿蘇海(与謝の海)を詠んだ与謝蕪村の俳句。春の海を見ながら一日中まったりとしている情景が語感からもありありと伝わる。
▼先日、買い物に出かけたときに「職人市」という催しがあり、歌舞伎座で店舗を構える「匠の会ひねもす」の出店を見つけ、ふとこの俳句が思い浮かんだ。店では縁起物の根付が並べられており、干支や七福神など昔ながらのものから、イルカや恐竜など現代風のものも。馬の漢字を左右反転にした「左馬」の根付は、馬が左側には倒れないといわれ、逆さにすることで不倒の象徴として足腰のお守りだと説明を受けた。
▼天橋立は、股のぞきで見ることで運気が上がる縁起の良い場所といわれる。海の幸も豊富だが、海辺にブドウ畑を所有する珍しいワイナリーも。1日ワインでも傾けながら海を眺めてまったりと過ごすのも一興。
▼ただ今は、有島武郎の「一房の葡萄」の一節「じっと坐っていながら夢で鬼にでも追いかけられた時のように気ばかりせかせかして…」ではないが、縁起物の根付はポケットに、せかせかと走り回るくらいがちょうど良い。
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