抹茶で睡眠の質が向上 認知症予防などウェルネスに資する情報を発信 伊藤園

 抹茶の継続摂取で社会的認知機能の改善と睡眠の質の向上傾向を確認――。

 伊藤園中央研究所は2月27日、「第10回 伊藤園ウェルネスフォーラム」を開催し、認知症予防などウェルネス(心身・社会・地球環境の健康)に資する抹茶の情報を発信した。

 冒頭は、軽度認知障害(MCI)と主観的認知機能低下(SCD)の60歳から85歳の高齢者99人を対象に1年間かけて共同実施した臨床試験の検証結果。
 同試験について、MCBIの内田和彦会長は「世界でも初めての長期間の研究」と胸を張る。

 抹茶群(46人)はプラセボ群(45人)と比較して、顔表情からの感情知覚の精度が有意に改善することが確認されたほか、ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)を用いて評価した結果、抹茶群でPSQIスコアが低下し睡眠の質が向上する傾向が示された。

 抹茶群の1日当たりの抹茶摂取量は薄茶お点前一杯相当量の2g。
 試験では抹茶2gを充填したカプセルとプラセボ群向けの着色コーンスターチを充填したカプセルをそれぞれ用いた。

 飲用時間・飲用スタイルは自由と定めた。カプセルは3か月ごとに回収。カプセルに充填した分が減っていることを確認しながら進められた。

 なお99人のうち8人は、試験中に認知症を発症したほか他の病気になるなどの理由で試験を中断した。

 臨床試験は、MCBI、筑波大学、医療法人社団創知会メモリークリニックとりで、伊藤園の研究チームで実施された。

 研究チームは、抹茶が新たに社会的認知機能の改善効果を有することを示したことに加えて、カフェインを含有するにもかかわらず睡眠の質にも改善傾向がみられたことに注目する。

 睡眠の質の改善には、抹茶に含まれるテアニンが大きく作用しているとみられる。「多くの研究者が抹茶の成分の中で鮮明に効くとすれば、テアニンであると合意できる」とMCBIの内田会長は語る。

 今回、試験対象となった高齢者以外の可能性については「表情認知という比較的若年者の方でも変わり得る項目で効果があったため、若い世代にも同じような効果が期待できる」と述べる。

抹茶の簡単な飲み方を実演する伊藤園の瀧原氏
抹茶の簡単な飲み方を実演する伊藤園の瀧原氏

抹茶の可能性について、伊藤園央研究所の瀧原孝宣担当部長は「(日光を遮る被覆栽培により碾茶には)アミノ酸がしっかり蓄積される。アミノ酸の半分はテアニンであり、抹茶するとテアニンの濃度が上がり旨みがしっかり感じられるようになり、同時に苦渋いカテキンが少し減る。ただし活性成分であるエピガロカテキンガレートはそれほど減らない。非常によい成分が高濃度に濃縮された、ある意味、究極のお茶」と説明する。

 抹茶の成分の中で「世界から注目を集めているのはビタミンK」と紹介するのはサルタ・プレス代表の西沢邦浩氏。
 「抹茶2gで60㎍(マイクログラム)程度摂れる。ビタミンKが老化制御ビタミンの1つではないか、と今非常に注目されている。抹茶の38%は食物繊維であるのも特徴。日本人の研究で、1日1.5~2gの抹茶摂取で腸内細菌層が改善して短鎖脂肪酸をつくる菌が増えたという研究も出ている」と続ける。

 認知症予防には、認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)の早期発見が重要とされる。

 筑波大学医学医療系臨床医学域精神医学の新井哲明教授は「MCIの段階で生活指導していくことがますます重要になってきている。その中で一番大事なのは生活習慣病への対策。糖尿病・高血圧・高脂血症が中年期にあると老年期の認知症につながる。それらの対策として一番多くの論文が出ていてエビデンスレベルが高いのは運動。もう1つが食事のバランス」と呼びかける。

 この中で抹茶は手軽に対策できるものとして位置付けられる。

 伊藤園の瀧原氏は、抹茶の簡単な飲み方を実演。「ボトルに水と抹茶を入れてシェイクするだけ。海外では、茶筅できれいに泡をたてるといった茶道とは違った形で飲まれている」と語る。

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