2024年下期の漬物業界は、気象要因が影響した原料野菜の不足と高値に悩まされた。
最も顕著だったのは平年比で3~4割の収穫となった梅だが、梅以外でも胡瓜、白菜、大根などメーカーが計画数量を確保するのに汲々とした原料は多い。輸入原料も同様だ。一部では平年作の原料もあったが、円安基調や原産地での需給バランスの変化から日本向けはおおむね上昇している。物流費その他の上昇分と合わせ、使用原料の国内、輸入問わず製品価格の適正化が来春早々に見込まれる。業界内で適正価格への大号令が広がる一方で、需要拡大に向けた取り組みも不可欠。業界にとっての長年の課題は、漬物=高塩分イメージの払しょくもその一つだ。
農水省は昨年開催された「野菜の日シンポジウム」で、「日本人の野菜摂取量が漸減しており、国民の約7割が一日360gの野菜摂取目標に達していない」と報告し「足りない野菜は漬物で」と呼び掛けた。漬物は水分を抜くために塩を利用するが、野菜の栄養分はほとんど損なわれることはない。
漬物と塩分の関係については、東海漬物(愛知県豊橋市)漬物機能研究所が今年9月に開催された「日本調理科学会2024年度大会」で研究成果を発表している。テーマは「市販漬物のナトリウム・カリウム含量の実態」で、国内で販売されている470品のナトリウム、カリウム含量を測定したもの。その結果として、「漬物に含まれる塩分量は全国的に低塩化が進んでおり、特にキムチ、浅漬、沢庵には塩分を排出するカリウムがバランスよく含まれている」と報告している。
業界にとっての後押しがある中で高塩分イメージを払しょくする新たな取り組みとして、商品パッケージの栄養成分表示を100g換算表示から1食分表示に改める取り組みが進められている。国内ガリ製品のトップ企業遠藤食品(栃木県佐野市)は機能性表示食品も受理している自社商品「しょうがフレーク」のパッケージで、1食分10gとして表示。同社は今後全製品で1食表示に切り替える方針だ。
栄養成分表示の見直しについては、業界団体の全日本漬物協同組合連合会内の部会でも現在検討中。ジャンルが幅広い漬物はガイドラインの線引きが難しいが、表示の切り替えを前向きに捉えるメーカーも少なくない。日本人の野菜摂取量を増やすためにも正しい情報で漬物がもつ栄養機能を生活者に知らしめることが市場規模拡大にも寄与すると思われる。