TT鍋とは?
キッコーマンソイフーズは秋冬、回復基調にある豆乳で「TT鍋」を新提案して勢いを加速させる。
TTは“豆乳を投入”の略称。TT鍋と銘打ち、寄せ鍋でつゆを追加する際の代替に無調整豆乳などの豆乳を投入していくことを提案していく。
料理などに豆乳を使う汎用性の訴求が目的。
取材に応じた大島秀隆取締役常務執行役員マーケティング本部長は豆乳ブームの再燃を思い描く。「2005年頃、豆乳のレシピブックが出されるほど豆乳がブームになったが、コロナ禍を経て忘れ去られてしまった感じがするため改めて訴求していく」と語る。
鍋での訴求にあたり、汎用性をより印象づけるため、豆乳鍋とせずにTT鍋とした。
「豆乳鍋という言葉はスムーズに伝わるが、“豆乳で少しアレンジを加える”といったニュアンスや簡便性が伝わらないため、TT鍋でももう一度アナウンスし直す」という。
寄せ鍋での提案では「“追いつゆ”とでも言うのか、2回目につゆを注ぎ込むタイミングで豆乳を投入していただくと驚くほどおいしくなる。濃さも調整できる」と胸を張る。
キムチ鍋へのTTは子どもに好適。「キムチ鍋は辛く大人の食べ物で子どもに食べさせるのが難しい中で、TTで辛みが和らぎマイルドな味わいになる」と説明する。
鍋以外にも、豆乳には、カルボナーラの生クリームの脂っこさを和らげる役割や、ホットケーキを大きくふくらませる役割があることにも触れる。
TT鍋の訴求方法については、一部の店舗でマネキンを活用しつつ、基本的にはSNSでの発信や各流通のアプリ内でデジタル広告を掲出する。
無調整豆乳が好調 飲み方ではソイラテ浸透
サブカテゴリでは、伸び盛りの無調整豆乳でプレミアム化の可能性を探る。
プレミアムタイプの「北海道産大豆 無調整豆乳」については販路拡大の余地を見込む。
「価格が少し高めの設定ということもあり導入店舗は少ないが、導入店舗では高回転している。好事例がいくつか出ており、店頭販促を加えながら横展開していきたい」と意欲をのぞかせる。
無調整豆乳市場の動きとほぼ一致して「おいしい無調整豆乳」は好調に推移。
「水と大豆しか使っていない中でおいしく仕上げるのは製造技術によるものであるため無調整豆乳の好調はメーカー冥利に尽きる。自然由来の素材と、砂糖による甘さがなく、おいしい点が受け入れられている」とみている。
主な使用用途としては、料理への利用のほか、ソイラテといったコーヒーと組み合わせた飲用が挙げられる。
「特濃調製豆乳」続伸 店頭では多箇所展開の動きも
ソイラテは、同社が提案強化している飲み方。6月には、渋谷ストリーム前稲荷橋広場(東京都渋谷区)で「キッコーマン豆乳 ソイラテSTAND2024」を開催してソイラテをアピールし、期間中、約2万人が訪れた。
「昨年は複数種のソイラテを用意したが、今年は、家庭でも簡単につくれることを強く訴求するためソイラテのみに絞り込んだ。長さ8mのトンネル型アトラクションを設け、その中をくぐり、カフェタイム・おやつ・運動後・朝食の4つのシーンで豆乳を飲む理由をご理解いただいた上でソイラテを提供させていただいた」と振り返る。
同イベントでアンケートに参加した来場者の声を集計したところ、“豆乳で大豆イソフラボンが摂取できる”という事実が浸透していないことが判明したことから機能面の訴求も今後強めていくとみられる。
トクホの「特濃調製豆乳」(特濃)も右肩上がりとなっている。
「味も濃く、トクホであることから非常にわかりやすい商品。一度、ソイラテで飲まれると、濃厚感がクセになるようで調製豆乳には戻れない方も結構多いと聞く。売場では豆乳だけではなくトクホのコーナーにも置かれ目につきやすい」と述べる。
「特濃」が、無調整豆乳の橋渡し役になるなど豆乳エントリーユーザーの獲得にもつながっている。
「『特濃』から初めて手に取られる方が多く、無調整豆乳を飲むのには少し早いと感じられる方に、味もついていて調製豆乳とほぼ同じ手頃な価格といったことで支持されている」との見方を示す。
ほどよい甘さという点では、昨年3月から展開している「砂糖不使用」シリーズでも手応えを得る。
砂糖不使用シリーズ好評 カルシウムを加えた新機軸商品も登場
「砂糖不使用 調製豆乳」ほか「砂糖不使用 豆乳飲料 麦芽コーヒー」「同 紅茶」「同 抹茶」をラインアップしている。
「『砂糖不使用』シリーズはじわりと人気が出てきている。味わいも“非常にすっきりしておいしい”とご好評をいただきリピート・トライアルともにとれている。アイテムでは『砂糖不使用 豆乳飲料 紅茶』は砂糖を抜いてある分、渋みのあとに後味の香りが物凄く感じられて人気を集めている」と語る。
9月23日には、新機軸商品として「調製豆乳」に牛乳と同等のカルシウムを加えた「豆乳+カルシウム」を発売開始した。
「カルシウムを体内に蓄積するにはマグネシウムが必要で、マグネシウムは牛乳よりも豆乳のほうが圧倒的に多い。鉄分も豆乳のほうが多く、一週間の前半を牛乳、後半を豆乳といった飲み分けや、牛乳と豆乳を半々で割る飲み方がみられる」ことが開発の背景にある。
なお2023年3月に実施した同社調べ(n=412、調査対象:20~49歳 子どもを持つ女性、複数回答)によると、「親が子どもにとって欲しい栄養素」の設問の1位はカルシウム(81%)、2位が鉄分(79%)、3位がビタミン(75%)となった。
「親が子どもに飲ませたい飲み物」の設問では1位牛乳(74%)、2位豆乳(56%)、3位乳酸菌飲料(51%)となった。
豆乳飲料、新商品続々
豆乳飲料では、8月19日に「チョコバナナ」と「りんご」の2品、9月30日に「きなこ」を新発売した。
「チョコバナナ」は、相性抜群のバナナとチョコレートの味わいを組み合わせた豆乳飲料。パッケージは、チョコレートがバナナにかかっている様子を表現。チョコレートのかかり具合やトッピングが異なる3種類があり、3種類を並べるとチョコレートがつながるデザインとなっている。
「りんご」は、ほどよい甘味と爽やかな酸味が特徴の、りんご風味の豆乳飲料。朝食や食後のデザートなどに好適なものとして開発された。
「きなこ」は、きなこの香ばしい風味と黒みつのやさしい甘みを感じることができる味わいが特長。
市場は回復傾向にある
前期(3月期)の豆乳販売実績については、2023年4月に実施した価格改定の影響で販売数量が足踏みした。
「前期は、業界で価格改定があまり進まなかったこともあり、他社商品との値差が広がったことと、乳酸菌飲料や睡眠の質向上を謳った機能性表示食品への流出により少し伸び悩んだ」と振り返る。
今期は一転し、価格改定が一巡して順調なスタートを切る。
「業界で価格改定が進んだことで値差が縮まり4月から少しずつだが回復傾向にある。さらに8月までの動きとしては、離反層以上に新規流入者が増えてきた。市場は今後も全般的に回復に向かっていくと思う」との見方を示す。