無糖系酎ハイ市場に新風の兆し 「檸檬堂」から満を持して「甘くない」新商品 独自開発のレモンエキスで「どんな食事にも合う」

 伸び盛りの無糖チューハイ(無糖系酎ハイ)市場に新風の兆しが見える。

 同市場に向けて、コカ・コーラシステムはレモンサワー専門ブランド「檸檬堂」から約3年の開発期間、500以上の試作を重ねて無糖レモンサワー「甘くない檸檬堂 無糖レモン」(甘くない檸檬堂)を5月27日に新発売する。

 満を持しての発売に至ったのは「檸檬堂」のレモン感と無糖の両立の難しさにあった。

 開発を担当したコカ・コーラ東京研究開発センターの矢野寛明製品開発部サイエンティストは「『檸檬堂』から糖を抜いてみると、驚くほど全くおいしくない。後残りする果汁感が無糖系酎ハイには味が重すぎ苦味を引き出すことが分かった。そこで果汁素材を抜いてみると、スッキリ無糖らしい味わいにはなるが、今度は檸檬堂らしくなくなってしまう」と振り返る。

左からコカ・コーラ東京研究開発センターの矢野寛明製品開発部サイエンティストと日本コカ・コーラの福満静儀マーケティング本部アルコール事業本部事業本部長 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
左からコカ・コーラ東京研究開発センターの矢野寛明製品開発部サイエンティストと日本コカ・コーラの福満静儀マーケティング本部アルコール事業本部事業本部長

 試行錯誤を重ねた結果、辿り着いたのは「無糖のうまさに必要なのは、甘さの引き算ではなく、うまさの足し算」の発想。

 かねてから採用している前割りレモン製法と合わせて新たに独自開発したレモンエキスを加えて「どんな食事にも合う」おいしさを実現した。

 独自開発のレモンエキスについては「パートナー企業様と一緒に作り上げたもので、かつ企業秘密のため詳細をお伝えすることはできないが、かなりこだわったろ過を実施している。灰汁をとるかのように極限まで雑味を取り除きレモンのおいしさ、果汁感が維持されるように作り上げた」と説明する。

 なお、レモンエキスは清涼飲料水にも応用可能だが、その予定はないという。

 レモン感・おいしさとの両立を図った無糖系酎ハイで勝算を見込むのは、消極的に無糖系酎ハイを選択している層の取り込みにある。

 日本コカ・コーラの福満静儀マーケティング本部アルコール事業本部事業本部長が、無糖系酎ハイの飲用層と、甘くないお酒を求める気持ちがありながらも無糖系酎ハイを選択しない層にヒアリングしたところ、判明したのは“既存の無糖系酎ハイにおいしさをあまり期待していないということ”だった。

 これを受け、福満氏は「せっかくお酒をいただく時間にこれ(消極的な選択)はもったいない。私たちがもっとおいしくお酒としての味わいそのものを楽しめる無糖系酎ハイをつくろうと考えた」と述べる。

「甘くない檸檬堂 無糖レモン」では「どんな食事にも合う」おいしさを実現 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
「甘くない檸檬堂 無糖レモン」では「どんな食事にも合う」おいしさを実現

 「甘くない檸檬堂」の発売に伴い「檸檬堂」全体ではサブブランド戦略を始動。

 「檸檬堂 定番」を中核に、今後発表の「季節の檸檬堂」とノンアルコールの「よわない檸檬堂」と並ぶサブブランドの1つに「甘くない檸檬堂」を位置付ける。

 「『檸檬堂』は発売から5年を迎えた。この先の5年に向けて晩酌の時間をさらに良い時間にできるようなブランドを目指し、2024年はより多くのお客様のニーズやライフステージに寄り添ったラインアップにしていくスタートの年」と意欲をのぞかせる。

 「甘くない檸檬堂」のメインターゲットは30代。「食事と合わせてお酒を飲むことが多くなり、甘くないお酒を探し始める年頃」とみている。

 甘さ控えめの「檸檬堂 さっぱり定番」とのカニバリについては「甘さが欲しいか欲しくないかで分かれるところで、大きなカニバリは予測していない」という。

 5月28日からTVCMを放映開始するほかデジタル施策を展開して訴求していく。

 「檸檬堂 定番」の年代別シェアで最も大きいのは20代。

 「若いお客様が食事のときも『檸檬堂 定番』を飲まれている。ただし年齢が上がると食事の時は甘くないものを飲みながら、食後に甘いものというローテーションに入っていく飲まれ方が増えていく」と語る。

 「檸檬堂 定番」「同さっぱり定番」「同レモン濃いめ」「同はちみつ」「同うま塩」「同うちわりレモン」の6品はパッケージをリニューアルし3月18日から発売している。
 その初動については「“少し身近なブランドになった”というお声をいただいており、ポジティブに働いている」との見方を示す。