ウイスキーに力強い味わいをもたらす、高温による「直火蒸留」。通常は都市ガスが使われるこの工程に、水素を利用する実証実験をサントリーが成功させた。
自然との共生による「グリーンで美味なウイスキーづくり」に取り組む同社。高温で燃えて燃焼速度が速いことなど、従来の都市ガスとは異なる水素の特性を生かし、蒸留工程の脱炭素化を進める。
山崎蒸溜所(大阪府)内のパイロットディスティラリーの燃焼設備を、東京ガスグループと燃焼設備メーカーSRCの協力により水素燃焼仕様に変更。これまで同様の、コクがあり力強い味わいをもつニューポット(ウイスキー原液)の蒸留を実現した。
高温で加熱する直火蒸留は、サントリーが掲げるウイスキーの「美味品質」に必要不可欠という。30年までにバリューチェーン全体で温室効果ガス30%削減を目指す同社では、直火蒸留と脱炭素化との両立が必要との考えから、燃焼してもCO2排出ゼロのグリーン水素に着目。世界初の「水素専焼」によるウイスキー直火蒸留にこぎつけた。
今後はサントリー白州蒸溜所(山梨県)の製造設備での実験も、東京ガスグループなどと共同で実施する予定。さらには米ビームサントリー社では、英国政府の補助も受けてウイスキーづくりの脱炭素化を推進。所有するスコットランドの蒸留所なども含め、グループ一体となりグローバルでの展開を目指すとしている。