飲酒ガイドライン「飲む量減らして」姿勢鮮明 酒類市場縮小に拍車?業界困惑

厚生労働省は2月19日、「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」を公表した。アルコール健康障害の防止へ、国民一人ひとりに適切な飲酒量や飲み方への理解を促すもの。昨年に行われた有識者会議での議論とパブリックコメントの募集を経て策定された。

ガイドライン(GL)では、年齢や性別、体質による影響の違いとともに、過度な飲酒やその後の行動によって、疾病発症や事故発生・他人とのトラブルといった行動面のリスクが高まることを説明する。

飲酒量の基準として示される純アルコール量は、摂取した酒に含まれるアルコールの重量(g)。

高血圧や男性の食道がん、女性の出血性脳卒中については少しでも飲酒すれば発症リスクが高まること、大腸がんの場合は1日あたり20g程度(週150g)以上のアルコール摂取で発症の可能性が上がることなどをGLは指摘する。これはビール500㎖缶1本にあたる量だ。

さらに性別による体内の水分量やアルコール分解能力の違いから、生活習慣病のリスクを高めるとされる1日あたり摂取量として「男性40g以上、女性20g以上」との数値が示されている。

GL策定の根拠となったアルコール健康障害対策基本法では、これを超える量を摂取する者の割合を、男性13.0%、女性6.4%にまで減少させることを重点目標として掲げる。飲酒量が少ないほど、飲酒によるリスクが少なくなるとの報告も盛り込まれた。

このほかにも「これらよりも少ない量の飲酒を心がければ、当該疾患にかかる可能性を減らすことができる」など、全体のトーンとして「飲む量を減らす」ことに重点が置かれているのが特徴だ。

酒類業界では、大手メーカーを中心に「適正飲酒」の普及に力を入れる。20歳未満の飲酒や酒気帯び運転、「イッキ飲み」や妊婦のアルコール摂取といった不適切飲酒はもとより、他人への飲酒強要などのアルハラ行為についても警鐘を鳴らしてきた。

酒の特性と効用、また誤用によるマイナス面をきちんと理解したうえで、各自が適正な飲酒を心がける。それがこれまでの「適正飲酒」の考え方だった。

これに対して国側は今回「飲酒量そのものを極力少なくする」方向に踏み込んだ点で、よりラディカルな姿勢を打ち出したとも言える。

進む飲酒人口減少やアルコールに対する価値観の変化を前に、将来的な酒類市場の縮小は業界にとってすでに織り込み済み。次なる時代のアルコールとの付き合い方の模索を続けているところへ投げかけられたのが、市場縮小に拍車をかけかねない今回のGLだ。関係者からは懸念の声も上がる。

こうした国の方針に、業界が掲げる「適正飲酒」はどう折り合いをつけていくのか。新たなアルコール文化の醸成に向けた、プラスの発想につなげられるのか。またひとつ難題が加わった。