人手不足の中で「20倍程度の応募がある」狭き門のコーヒー店 猿田彦珈琲が人気なワケ

 スペシャルティコーヒー専門店の猿田彦珈琲が人気だ。

 現在22店舗ある直営店は人流回復やインバウンド需要を取り込み好調。11月末にオープンした北海道初となる店舗も好スタートを切り、全国的にブランド浸透が図れているとみられる。スーパーなどで売られる小売商品の引き合いも強まり導入が拡大。

 ブランドを冠したコンビニスイーツは即完売となった。

 人気ぶりを象徴するのが直営店の求人だ。

 11月30日取材に応じた大塚朝之社長は「募集すると1人の採用に対して20倍程度の応募がある」と語る。

猿田彦珈琲の大塚朝之社長 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
猿田彦珈琲の大塚朝之社長

 人気の理由は、国内外で開かれる数々のバリスタコンテストで好成績を残していることにある。

 「ここ10数年間、教育に投資を集中してきた結果、ようやく芽が出始め、国内外のバリスタコンテストに当社の社員が常に上位に入るようになった」と振り返る。

 これにより、猿田彦珈琲で働くと“コンテストに出場できる”“出場経験のあるプロに教わることができる”というモチベーションが応募者の中に生じていると大塚社長はみている。

 コンテスト常勝の原動力は、大塚社長がここ十数年来、力を注いできた教育にある。
 「教育は、従業員の教育を熱心にやったということではなく、従業員がトレーニングしやすい環境の整備やコンテスト用のコーヒー豆の調達や焙煎といったサポート体制を強化していった」と説明する。

 同社では、技術などに磨きをかけてコーヒーの最高峰に挑む取り組みをスモールビジネスと称し、大塚社長はかねてからスモールビジネスからビッグビジネスへの循環を意識していた。

 ビッグビジネスとは、直営店の運営や小売商品の販売を意味する。
 「スモールビジネスでコーヒーピラミッドの頂点を目指しつつ、その過程で培った知見や技術をビッグビジネスに活用する循環の仕組みづくりを思い描いていた。これまでは、大会で私の中では納得できる結果が出せず難しかったが、やっと結果を出すことができた」と述べる。

 売上高は前期(5月期)の26億円から今期に30億円の大台を突破する見通し。

 「100億円を目指せるステージに到達したと捉えている。店舗数は現在の22店舗から50店舖まで頑張れそうだ。50店舗規模になれば、新たに輸入した豆を1ヵ月で使い切り、次の新しい豆を輸入するといった良い形のサプライチェーンが構築でき、海外展開も視野に入る」と意欲をのぞかせる。