11.8 C
Tokyo
14.2 C
Osaka
2026 / 02 / 16 月曜日
ログイン
English
飲料嗜好飲料スーパーの店頭販売に新風 紅茶市場の活性化を狙う新しい取り組みとは?

スーパーの店頭販売に新風 紅茶市場の活性化を狙う新しい取り組みとは?

スーパーの店頭で紅茶の試飲を勧められて立ち止まると販売員(マネキン)の話についつい引き込まれ、もともと買う予定のなかった紅茶を思わずカゴに入れる――。

11月28日、イトーヨーカドー能見台店(神奈川県横浜市)での光景だ。

店頭に立つのは、日本紅茶協会認定・ティーインストラクター。

「広く一般の生活者に対して紅茶をより一層おいしく飲んでいただくことを目的とし、紅茶の淹れ方や知識を深め、多くの人に広める活動をするために必要な能力を備えた有資格者」(日本紅茶協会)となる。

ティーインストラクターの資格を取得するためには、紅茶に関する知識はもちろん、講師としての素養も求められる。資格取得後は、情報を噛み砕いてわかりやすく伝える話術など研鑽を積む必要がある。

このようなプロセスを経て店頭に立つティーインストラクターは、一般的な販売員とは一線を画し、紅茶のさらなる普及促進とともに売場で興味関心と購買を促す存在として、今スーパーからも期待されている。

この取り組みが始まったのは今年10月。

この取り組みの裏には、紅茶文化を日本にもっと広げたいという業界全体の熱い想いと、日常で紅茶の接点を増やす為の綿密な計画があったという。

このティーインストラクターによる店頭販促企画の旗振り役を務めたのは、日本紅茶協会の秋庭浩平専務理事。

「世界的にみれば水以外では紅茶が一番飲まれているが、日本は世界に比べるとまだまだ紅茶の存在感が薄い。また、日本紅茶協会では毎年約60人の生徒が卒業してティーインストラクターの資格を取得し、有資格者数は累計約2300人に上るものの、資格取得後に技術や知識を広める活躍の場所や機会が少ない」との課題意識のもと模索する中で生まれたのが、この“ティーインストラクターによる店頭販促”企画だった。

「これまで、ティーインストラクターの資格取得後は、紅茶教室やセミナーを開催して活動をしている人が多かった。しかし、スーパーという紅茶に興味のない人も多く訪れる場所でも、紅茶の魅力をしっかりと語れる人がお客様に説明する機会を設けることで、これまで紅茶に接点のなかった方も、興味をもっていただくきっかけを生み出すことができる。また、ティーインストラクターも、資格を活かしていただけることはもちろん、資格取得時は決められたセリフを伝えるところから始まるが、そこから先は、人に語りかけ、しっかり自分のほうを向いていただくことが、今後個人で活動をされていく中でも非常に重要になると考えている。そういう意味で店頭販促の“他流試合”で研鑽を積むことができれば全体的なレベルアップに繋がるのではないか」と語る。

このティーインストラクターによる店頭販促は、日本紅茶協会、日本ティーインストラクター会、会員企業が協業する新しい取り組みである。

先陣を切ったのは日東紅茶ブランドを取り扱う三井農林。冒頭のイトーヨーカドー能見台店で店頭販促したのも同社の商品となる。

開始早々、流通の反響は上々だという。

「同じマネキンさんでもティーインストラクターの方は紅茶の知識も豊富で、講師としてのトレーニングも積んでいるため、流通様も“差別化につながる”と物凄く好感を持っていただきリピートのお声も頂戴している」と手応えを語るのは三井農林の笠原茂さん。

一方、ティーインストラクターにとって店頭販促は修練の場にもなりうる。

実際、店頭に立った日本紅茶協会認定ティーインストラクターの奥野紫穂さんは「紅茶に興味がない人にも紅茶を勧めるという点において難しさはあるが、紅茶セミナーでの実演などと大きく異なり、幅広い方々へ紅茶を知っていただくための活動である点が一番の狙いになると思う」と述べる。

ティーインストラクターは紅茶セミナーでは“先生扱い”だが店頭ではそうはいかない。

三井農林の村野かをるさんは「展示会や店頭などいろいろな方がいる中で紅茶を勧めるのはプッシュする施策のため紅茶セミナーで講師を務めるのとは勝手が全く異なりハードルが高い。我々としては、紅茶をあまり意識されていない方が、一人でも多く紅茶に興味をもっていただくきっかけを作ることを期待している」と続ける。

新しい取り組みについて奥野さんは「やはり企業様と一緒に活動させていただいくことで、一層知識が深まっていく。レベルアップの機会になるので、どんどん広がってほしい」と期待する。

三井農林としては、紅茶市場の拡大や日東紅茶ブランドの価値向上を目指し、今後は30分程度のミニセミナーを含め、活動を更に加速する考えだ。

「日東紅茶商品の『デイリークラブ』や『DAY&DAY』の名に込められているように、紅茶をお菓子やケーキがある特別な時しか飲まない、というのではなく、普段の生活の中に自然に溶け込み毎日気軽に飲んでいただきたい」と村野さんは思いを巡らす。

日本紅茶協会の秋庭浩平専務理事(中央右)、日本紅茶協会認定ティーインストラクターの奥野紫穂氏(中央左)、三井農林の笠原茂営業本部WithTEA推進部東日本室室長(右)、三井農林の村野かをる経営企画部次長兼営業第一本部WithTEA推進部次長
日本紅茶協会の秋庭浩平専務理事(中央右)、日本紅茶協会認定ティーインストラクターの奥野紫穂氏(中央左)、三井農林の笠原茂営業本部WithTEA推進部東日本室室長(右)、三井農林の村野かをる経営企画部次長兼営業第一本部WithTEA推進部次長

日本紅茶協会では、今後も若年層や男性層など紅茶ユーザーの裾野拡大に向けて引き続き施策に取り組んでいく。

秋庭専務理事は、紅茶の需要拡大につながりうる施策を検討している。

「紅茶文化はイギリス発祥ということもあり“紅茶とはこういうものだ”といったかしこまった部分がある。今回の取り組みなど、一人でも多くのお客様に紅茶を体験いただくタッチポイントを今後も増やしていくことで、紅茶に親しみを感じていただき、このハードルを下げていきたい」との想いを語る。

関連記事

インタビュー特集

学生が育てるアーモンドの木 明日の社会へ価値循環 デルタインターナショナル×キャンポスブラザーズ

アーモンドの世界的産地である米カリフォルニア州でも、トップクラスの供給量を誇るキャンポスブラザーズ社。日本の販売総代理店を務めるデルタインターナショナルでは、学生の手でアーモンドの木を育てて商品化することを目指す玉川大学の...

原点は休憩中に見上げたキウイ 全国で食材発掘、生産者と企業つなぐ サッポロビールの地域創生事業

 明治9年(1876年)、北海道で新たな産業を興すべく設立された「開拓使麦酒醸造所」をルーツとするサッポロビール。創業150周年を迎える今も、その“開拓”の精神は息づく。ビール会社としての枠にとらわれない発想力を武器に、事業領域拡張の最前線で奮闘する人物に迫った。一次産業を担う各地の生産者と企業のバイヤーをつなぎ、農林水産物の需要創出をサポートするサッポロビールの地域創生事業。その原点は、外食企業のコンサルティングを手がける部署で九州の拠点に配属されていた、一人の担当者のひらめきだった。

カキ養殖の展望を聞く〈前編〉 “殻付き”市場拡大 環境変化と効率化に対応 シーパジャパン・吉本剛宏社長

瀬戸内海で養殖カキが甚大な被害を受け、生鮮市場だけでなく加工メーカーや流通にも影響が及んでいる。こうした中、従来の養殖方法とは異なるシングルシード養殖法が注目されている。

繋げる、繋げる、繋げる たこ焼きコミュニケーション足掛かりに TKO・木本武宏さんが次のフェーズへ

STUDIO TAMUROはお笑いコンビ「TKO」木本武宏さんの活動拠点。木下さんの実妹・大岡真裕美さんが代表を務める「オフィスTAMURO」が運営し、トークライブや、YouTube番組作成スタジオとして利用してきた。昨年5月からは新たな活動として、毎月3日だけ営業する「たこ焼き店」がスタートした。

SST=“サミットの仕事が楽しい”へ 新たな競争軸を作る 服部哲也社長

――中期経営計画の進捗はいかがですか。― 服部 「良い×強い=最強」という言葉を掲げた中期経営計画「頂(イタダキ)2025」は、最終年度を1年延長して26年度までとした。