J-オイルミルズの佐藤達也社長は上期決算を振り返り「外部環境に応じた適正価格での販売や高付加価値商品の拡販、不採算事業の改善が進み、20年度以前の利益水準への回復が進んできた」と構造改革の取り組みに手応えを示した。そのうえで、さらなる成長に向けては「既存事業の安定収益確保とともに、新たな事業領域の育成が急務」と語った。
同社の上期決算は売上高1千246億円(1.4%増)、営業利益49億円(前年同期は1.5億円の赤字)。油脂の原料コストが軟化し、価格改定の浸透、マーガリン事業の収益改善が進んだことで大幅増益を達成。通期の業績見通しも上方修正し、営業利益は20年度並みの70億円まで回復する見込みだ。
主力の油脂事業は、原料価格の高騰が落ち着き、価格改定の取り組みが浸透。販売数量は前年を下回ったものの、適正価格での販売に努め、家庭用では新たな機能を付加したクッキングオイルや、紙パック容器の「スマートグリーンパック」、業務用の長持ち油「長徳」など、付加価値品の拡販が成果を挙げた。
赤字が続いていたマーガリン事業は、今期中の黒字化を見込む。市場縮小と設備老朽化が課題となっていた家庭用マーガリンは3月末での事業撤退を決めた一方で、業務用マーガリンはマレーシアのグループ会社の生産設備を活用した日本向け製品の製造・販売を強化。土産菓子や製菓製パン向けなどの提案強化とともに、成長が見込めるアセアンでの展開も視野に入れる。
海外については今期から専任の事業部を新設し意思決定と推進体制を強化。SOYシートやビタミンK2などの既存領域の拡大とともに、北米やアセアンでの事業シナジーを検討・実行していく考えを示した。
なお下期に向けて、油脂事業では「原料高騰が深刻化しているオリーブオイルの価格改定と需要への影響が課題」(上垣内猛取締役専務執行役員COO)。干ばつの影響で欧州のオリーブオイル生産量が激減し、「スペイン産オリーブオイルの価格は約3倍に高騰している」。
10月からオリーブオイルは再度の価格改定を進めているが、過去にない上げ幅となるだけに、「物量への影響も想定されるが、(メニュー提案などを重ねて)オリーブオイルの価値をしっかりと伝えていくことが大きなチャレンジ」(上垣内氏)と語った。
業務用については、原料相場の軟化で市中価格も下がってきているが、円安の進行もあり先行きのコスト環境は楽観できない見通し。
引き続き「長徳」など付加価値品の拡販を進めるとともに「物量は前年並みを確保しながら、適正価格の販売で採算を確保していく」との方針を示した。