缶コーヒー市場は近年ダウントレンドにあり、5月1日からの各社の値上げにより、この流れは加速しているとみられる。
缶・ペットボトル(PET)などのコーヒー飲料(RTDコーヒー)市場全体も、レギュラーコーヒーなど手淹れコーヒーの拡大・多様化の煽りを受けている模様で足踏みしている。
缶やPETを含めた1-6月コーヒー飲料市場は前年同期比1%減と推定される。
缶コーヒーは復活できるのか?――。
缶コーヒーは近年低迷しているものの市場規模は依然大きく、各社ともSOT缶が今後も漸減傾向にあることをある程度想定しつつも、“出血”をできるだけ食い止めて現在のボリュームを維持し、あわよくば再浮上の好機をうかがうべく、コミュニケーション活動や店頭活動を絶やすことなく続けている。
全国清涼飲料連合会の「2022年清涼飲料水容器別生産数量」によると、一般的に缶コーヒーと呼ばれるSOT缶の生産量はアルミ缶とスチール缶の合算で78万8624KL。中型ペットボトル(PET)の85万1219KLに次いで大きく、コーヒー飲料トータル(303万3400KL)の25%強と一定のボリュームを占めている。
今年、缶コーヒーの明るい兆しとしては「BOSS」(サントリー食品インターナショナルの)の善戦が挙げられる。
「BOSS」缶コーヒーの1-7月販売実績は前年超えを記録。この春に新発売した「ボス カフェイン」の2品を除外しても前年を上回った。
善戦要因について、サントリー食品インターナショナルの野下剛SBFジャパンブランド開発事業部課長は「缶コーヒーヘビーユーザーをつなぎとめるべくコミュニケーションとプロモーションを絶やすことなく商品と連動させたことが効いてきたのだとみている」と述べる。
市場環境については、各社とも主要販売チャネルの自販機での値上げ商品への切り替えが自販機オペレーターや設置先であるロケーションオーナーの理解を得ながら徐々に進められていることもあり、値上げによる影響は限定的との見方が大勢を占めている。
ほぼほぼ自販機での値上げが完了する年末頃には一層の厳しさが見込まれる中、「アフターコロナに向かって人流が回復しており、ショット飲みの提案方法はまだまだあると考えている。つなぎとめていくことで、興味喚起を図り、飲用機会を増やしていきたい」との考えを明らかにする。
缶コーヒーの主要販売チャネルは自販機。その自販機で健闘するのはコカ・コーラボトラーズジャパン。
上期(1-6月)、5月1日出荷分から「ジョージア」缶コーヒーや「コカ・コーラ」350ml缶などの缶製品を値上げしてケース当たり納価を大幅に改善したほか、販売数量も1%増となり前年同期比をクリアした。
8月10日決算説明会でコカ・コーラボトラーズジャパンホールディングスのビヨン・イヴァル・ウルゲネス副社長CFOは「自販機は今年5月に主力の一つである缶製品の価格改定を実施したことで数量への影響は避けられなかったが、これまで構築した強固なシェア基盤やコカ・コーラ公式アプリ『Coke ON(コークオン)』の積極活用で販売数量は1%増と第1Q(1-3月)のトレンドを維持した」と振り返る。
今春から順次実施している「ジョージア」のブランド刷新も自販機の販売に寄与。
コカ・コーラボトラーズジャパンのコスティン・マンドレア執行役員最高営業責任者兼営業本部長は「SOT缶でのキャンペーンで消費者トレンドを捕まえて、より高い価格でマーケットシェアも増やすことができ、さらに利益も上げることができた」と説明する。
アサヒ飲料は缶コーヒー「ワンダ」のショート缶を全面刷新して缶コーヒーヘビーユーザーとの接点を強化している。
「モーニングショット」「モーニングショット ブラック」「金の微糖」の中味とパッケージをリニューアルして9月5日から発売している。
この中で「モーニングショット」「モーニングショット ブラック」は、コーヒーを注いだ時の焼きたて・挽きたて・淹れたてのような香気成分を凝縮した香り“新・ワンダモーニングアロマ”を加え、朝にふさわしいコーヒーの香りを引き立たせた。
UCC上島珈琲は9月4日からスーパー・量販店を中心に今春の新商品「UCC BLACK無糖 New Ground Fruity Blend」の6缶パックを順次発売して定番品「UCC BLACK無糖」6缶パックとともに売場の盛り上げを図っている。
なお缶やPETを含めた1-6月コーヒー飲料市場は前年同期比1%減と推定される。
*9月27日付コーヒー飲料特集を改編