「歌舞伎揚」が好調 猛暑にも定番の力強さ発揮 要望に応え生産体制を整備 天乃屋

天乃屋の前期(8月期)売上高は主力商品の「歌舞伎揚」を中心に「古代米煎餅」や「瑞夢(えび味・しょうゆ味)」が牽引して前年比二ケタ増の95億円強を見込む。

取引先の要望に応えるため、矢吹工場(福島県西白河郡)と岩手工場(岩手県奥州市)に特定技能実習生を中心に人員を増強し、生産体制を整備している。

「歌舞伎揚」は前期、前々年比20%以上の増となる見通し。昨年11月に2回目の価格改定を実施したが、買え控えは起きず数量ベースでも好調を維持している。

その要因について、7月19日取材に応じた大砂信行社長は、米菓市場の「地合いの良さ」と定番回帰の流れを挙げる。

天乃屋の大砂信行社長 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
天乃屋の大砂信行社長

定番回帰については「米菓に限らず食品全般の傾向として、不況になったりして生活防衛意識が強くなると、昔から定番商品が売れる。値上げが相次ぎ、購買意識が保守的になってくると、新しいものよりも昔から食べていたものに手が伸びやすくなり、このことが『歌舞伎揚』の追い風になった」との見方を示す。

「歌舞伎揚」のラインアップの中で、節約志向の強まりを受けて伸ばしているのは「ひとくち(ぷち)歌舞伎揚」などの100円商品。

「100円商品は数年前までずっと落ち込んでいたが、少し前から盛り返している。値頃感でも『歌舞伎揚』はうまく波に乗ることができた」と語る。

 夏場には、関東や東海エリアなど各地で猛暑が続く中でも力強さを発揮した。

「あまりに暑すぎると外出を控える傾向にあり、エアコンの効いた室内で菓子が喫食されている」という。

「歌舞伎揚」に続く第二・第三の柱として育成中の「古代米煎餅」と「歌舞伎揚瑞夢(えび味・しょうゆ味)」も好調に推移している。

古代米とは、日本で古くから栽培されてきたイネの原種の特徴を受け継いでいると推測される有色素米などの総称。

古代米煎餅 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)

天乃屋の「古代米煎餅」は、その中でも濃い紫色をした紫黒米を使用。米の紫色には、赤ワインやブルーベリーと同じアントシアニンというポリフェノールが含まれており、さらにキヌアと黒ゴマを配合し、健康志向にも対応しているとみられる。

「そもそも米菓は健康志向に対応し、雑穀類は馴染みやすい。『古代米煎餅』は発売開始から10年以上経つ商品で、本当にここ数年で伸びている。導入店舗の拡大に伴い、それが売上増とさらに導入店舗増を呼び込んでいる」と振り返る。

「歌舞伎揚瑞夢(えび味・しょうゆ味)」も発売10年以上の商品。生地を揚げる直前にサッと霧吹きする「水吹きフライ製法」を導入して、煎餅の表面全体に細かなひび割れをつくり花が咲いたような仕上がりが特徴となっている。

岩手工場でフライヤー1台で製造していたのを、2019年に福島工場を閉鎖し矢吹工場に新築移転したのを機に、矢吹に移管して生産設備を一新。独自の新型フライヤー2台を導入して品質を大幅に向上させ、商品を傷つけないように平面のまま連続ライン化し、ロボットによる包装ラインも導入した。

矢吹工場は人手不足を課題としていたが、昨年11月にインドネシアから特定技能実習生を雇用して生産体制を整えている。

「インドネシアの実習生が現在29人に増えたことで生産能力は大きく向上した。実習生は、来日経験のある方が多く、コミュニケーションもとれている。今年中に50人にまで増える予定で、これによりこれまでできなかった二交代制もかなり進捗している」と述べる。

また、人員が増えたことで一部商品において控えていた販促を9月から通常通りに行い、さらにこれまで常態化していた休日出勤や残業を減らすことができ、労働環境の改善も行えている。岩手工場にも今月より3人採用し、今後増員する予定だ。

売上は好調でも、これまで安定していた米の価格が上昇基調に転ずるなどコストが一段上昇するとの見立てから、来期も引き続き効率化に重きを置く。

「食油が2倍(ピークは3倍)、そのほかの原料資材も軒並み値上がりし、さらには電気・LNGなどの燃料も高騰しているのをすべて価格転嫁することはできないので、転嫁率は低い。ここにさらに主原料である米の不足と値上がりが加わり、非常に厳しい状況となっている」という。

「これまでアイテムを絞り込み、生産性を高めて労務費率を落とすなど経費の削減を行ってきたが、さらに継続する必要がある。前期はそれに値上げと増収効果で収益の改善を図ってきたが、この取り組みを引き続き追求して、さらに深掘りする必要がある。

物流に関しても2024年を控え、運賃の問題、ドライバーや倉庫従事者の労働時間の問題を解決するため、パレット輸送・工場からの直接配送・各エリアへの配送方法の見直しなど、あらゆる角度からの見直しを行っている。

「今期はもう一度原点に戻り体制を整える1年にしていきたい」と気を引き締めている。

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