鏡餅 受注は今月末まで 廃棄ロス、人手不足へ対策本腰 全国餅工業協同組合・佐藤理事長に聞く

年末の数週間に商戦が集中する鏡餅。近年の生活スタイルや世帯構成の変化から小型アイテムへと需要がシフトし、市場は縮小傾向にある。

とはいえ餅業界にとって、年に一度の重要商戦。持続可能なビジネスを目指し、業界では今年初めて10月31日を「受注締切日」に設定した。全国餅工業協同組合理事長でサトウ食品(新潟市)社長の佐藤元氏にねらいを聞いた。

「メーカーサイドとしては待ったなし。今までのような対応は難しい」。佐藤氏は業界の厳しい内実を訴える。

短期決戦の際物商材である鏡餅。例年、商戦の大詰めになって流通側から追加発注を受けるケースが多く、メーカーではそのたびに人手をやりくりしながら対応に追われてきた。

ただ限られた期間の販売見込み精度を高めることには限界があり、過剰生産が常態化。売れ残りの廃棄が多発していた。年末の繁忙期に人員を確保することも、昨今の人手不足から限界に達している。

佐藤元氏(全国餅工業協同組合理事長/サトウ食品) - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
佐藤元氏(全国餅工業協同組合理事長/サトウ食品)

このため今年は10月末日をもって受注を締め切り、以降は注文を受け付けないことを決めた。生産数量を確定したうえで、必要な人員を確保。需要に応じた生産体制の最適化を図る。

「コロナ禍を経て、労働人口が確実に減った。とくに新潟県下では強く感じている。去年も各社でかなり無理して作っいたはず。発注が増えて作りきれないならまだいいが、発注が増えないなかで年末に人が集まらず作れないというのが実情だ」。

かつては売れ残った鏡餅の返品を受け付ける慣行もあったものの、各社とも30年ほど前に廃止。廃棄ロスの削減は、流通側にとっても切実な課題だ。

「小売も大手ほど環境問題には積極的に取り組んでいる。大半のお得意先にはご理解いただけており、追加注文はしないというスタンスになってきている」と話す。

その一方で、すでに発注した分について数量を減らしたいという要望にも例年悩まされてきた。

「おせちのかまぼこも、その年に赤と白のどちらが売れるかは予想できない。鏡餅の売れ筋も同じで、年末近くになって『やっぱりいらない』ということも起こってくる」。こうしたことで発生する廃棄ロスの削減にも力を入れる考えだ。

「鏡餅は“超”際物。近年は売れ筋がダウンサイジング傾向にあるなかでも、餅業界にとっては年末の大きな売上げになるので、持続させていかねばならない」と語る佐藤氏。

締切日設定後、初の商戦が近づく。

「11月以降の注文には応じられなくなるが、今月中にいただいた注文に関しては死に物狂いで作る覚悟だ」と意気込む。

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