卓抜したインストアサイネージ ボタン1つで複数台が音声付きで店内一斉放送 できたて惣菜などをアナウンスして非計画購買促進 流通革命に挑むトライアル②

トライアルホールディングス傘下のトライアルカンパニーは、強みの1つに卓抜したインストアサイネージがあり、食品を中心とした総合品揃え型のディスカウントストア店舗へ順次導入している。

店員がボタン1つ押すと、店内に複数台設置されたインストアサイネージが音声付きで一斉に放送を開始するのが卓抜した点。

野菜コーナーなどの売場に合わせた映像や写真のオリジナルコンテンツの配信だけでなく、音声付きで店内一斉放送できるという点で特許技術を取得している。

取材に応じたトライアルカンパニーの野田大輔マーケティング部部長は「例えばインストア加工で唐揚げができた時にボタンを押すと店内の全サイネージが唐揚げのクリエイティブに変わる。その時最も必要とすることがすぐにできるというのは、既存のものではなかなか難しい技術になる」と胸を張る。

焼き芋のインストアサイネージ(トライアルカンパニー) - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
焼き芋のインストアサイネージ(トライアルカンパニー)

館内の音声と連動して出来立ての惣菜を知らせたり、季節や催事に合わせた訴求コンテンツを配信したりすることが可能となっている。

これにより、非計画購買を促し売上増加につなげた事例もでてきている。
 
「焼き芋の出来立てをオンデマンド放映したところ、インストアサイネージを設置していない店舗に比べ売上げが114%アップした事例がある」という。

インストアサイネージで配信するコンテンツやクリエイティブは、電通グループとトライアルホールディングス傘下のRetail AI X社の合弁会社・SalesPlus社で製作。

トライアルがリテールDXタウンとしての街づくりを進める福岡県宮若市にデジタルマーケティングの新拠点「MEDIA BASE(メディアベース)」を構え、ここに撮影スタジオを完備し早く安く大量にクリエイティブを生み出す体制を整えている。

「MEDIA BASE(メディアベース)」の撮影スタジオ - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
「MEDIA BASE(メディアベース)」の撮影スタジオ

ここでは、顧客への発信を考えることを目的に、トライアル公式SNSアカウントでの発信やスマホ決済アプリ「SU-PAY(スーペイ)」の開発も行っている。

「NB商品の場合、クリエイティブ素材があったりするが、生鮮食料品や衣料品などのPB商品は自分たちでクリエイティブをつくらないといけない。あとは、メーカーさまとサイネージでの効果創出プロジェクトなどを高速でPDCAを回している」。

効果創出プロジェクトは、顧客の非計画購買を促し売上拡大を図るためのもので、例えばTVCMをそのまま活用したパターンや販売実績を訴求したパターン、食べ合わせ・飲み合わせを訴求したパターンなどを複数の店舗で展開し購買行動の変化を確認・分析していく。

その結果、「トライアルとしては、いくつかの店舗で実験して数字の効果が出たものを他の店舗に広げ、メーカーさまはその知見をそのまま他の小売企業様で展開されることもある」という。

インストアサイネージの設置台数は4月末現在で78店舗・1900台。5月8日には福岡県内のトライアル全店舗(57店舗)への導入が完了し、今後さらに導入店舗を増やしていく。(つづく)

※流通報道記者会で取材