アサヒビールは、アルコール分3.5%の新商品「アサヒスーパードライ ドライクリスタル」で新規需要の獲得とビール市場の活性化を目指す。発売は10月11日。23日開催した発表会の席上、松山一雄社長は「多様化するライフスタイルに寄り添える価値を持った商品。アル分3.5%でも『スーパードライ』の特長である飲み応えとキレの良さを実現した。ユーザーの年齢層や食シーンを限定せず、ポテンシャルは大きい」と期待を語った。
冒頭、松山社長は「アサヒスーパードライ ドライクリスタル」を“未来志向”で開発したと強調。「当社は新しい価値を提供することで需要を喚起し、マーケット全体の拡大を目指している。例えば『生ジョッキ缶』は既存の『スーパードライ』とほとんどカニバリせず上乗せできている。『ドライクリスタル』も新たな需要を開拓しながら大きく育てていきたい」。
開発背景には“ビール減税以降のビール回帰”と“ライフスタイルの多様化”を挙げた。「1回目のビール減税(20年10月)を経て想定以上にビール回帰が進んだ。昨年10月の価格改定で影響を懸念したものの、トレンドは変わっていない。新商品は2回目の減税(23年10月)と同じタイミングで発売することになるが、お客様に手に取っていただく機会を最大化できればとの考えもある」(松山社長)。
また、ライフスタイルの多様化を背景に、ビール類は世界的にアルコール度数0~3.5%の販売容量が拡大傾向にあると説明。しかし、日本国内の市場は5%前後の製品が約7割を占める。「まだ低アルコールビールの選択肢は少ないものの、当社の調査では3.5%前後(ミドルレンジアルコール)の潜在ニーズを確認できている」とし、「新商品のコアターゲットは自身のライフスタイルに当てはまるビールが無いと感じている方々だ。年齢層は若者や中高年など幅広く想定。喉が渇いた時に勢いよく飲みたい方、食事とともにゆっくり楽しみたい方、友人と遊びながら飲みたい方など、『ドライクリスタル』は様々なシーンに対応できる」。
一方、開発工程では様々なイノベーションに挑戦した。ミドルレンジ商品でありながら本格的な味わいを追求するため、研究所や工場が一体となって生〈非加熱〉製造を実現したほか、ドイツ産ホップ「ポラリス」を一部使用することで冷涼感の余韻を演出、さらに高発酵度醸造によりシャープなキレとクリアな後味にこだわった。
酵母は「スーパードライ」と同様の「318号酵母」を使用。パッケージはレギュラー品のデザインをベースに白を基調とし、赤色の八角枠とプルタブで新しさも打ち出した。商品名の「クリスタル」は“透明感のあるクリアな後味”を表現するとともに、“お客様の人生を躍動的で充実した輝かしいものにしたい”との想いを込めている。
梶浦瑞穂マーケティング本部長は「『ドライクリスタル』の狙いは新しいライフスタイルを提案すること。新たなユーザーや飲用シーンを開拓し、10年後のど真ん中を目指していく」。
新商品は家庭用の350ml缶と500ml缶。店頭売価はレギュラー品と同等を想定。純アルコール量はそれぞれ9.8gと14gで、レギュラーの「スーパードライ」(350ml缶・14g)に比べて約70%に抑えられている。
年内の販売目標は150万ケース。今後は市場動向を慎重に見極めながら業務用への展開も視野に入れ、30年頃には年間1千万ケース規模を見込む。広告のキーメッセージは「研ぎ澄まされた、透明感あるDRY。」。発売前を含め3か月で6千GRPのテレビCMを投下しトライアルを喚起する。