食中酒としての需要の広がりから、一層の成長が見込まれる缶チューハイなどのRTD市場。ビール類の酒税改正が進むなか、26年までは税率が据え置きとなることも追い風だ。この分野への傾注を強める酒類大手からは多彩な商品が登場し、売場はにぎわう。
「新食中酒」をテーマに掲げ、市場創造型の商品で挑戦を続けるサッポロビール。RTDの上期販売実績は104%。前年並みとみられる市場を上回った。
「二番煎じはやりたくない。それも『差別化のための差別化』ではなく、お客様の隠れたニーズ掘り起こしたオンリーワンの商品を提案する」。そう語るのは、ビール&RTD事業部兼新価値開発部グループリーダーの後藤正明氏。
今春発売した「ニッポンのシン・レモンサワー」も、そんな姿勢を体現したブランドのひとつだ。レモン系RTDがずらりと並ぶ売場で“迷わず選べる「シン・定番」レモンサワー”がコンセプト。グループ企業であるポッカサッポロフード&ビバレッジのレモンのプロ「レモンマイスター」と協働で開発した。
一方、主力ブランドの一角を占める「濃いめのレモンサワー」もレモン系。こちらは濃い味とコスパを強みに、上期も107%と好調だ。〈若檸檬〉などエクステンション品も随時展開し、10月には「濃いめのグレフルサワー」も数量限定で発売する。
「コスパと“濃くておいしい”が特徴の『濃いめ』に対し、『シン・レモン』はとがった特徴がない点でとがったブランド。レモンサワー選びに迷う回遊層に、そのど真ん中の価値を届ける。ターゲットの年代や性別は似ているが、提供する価値が異なるためカニバリはない」と後藤氏は話す。
開発にAI活用もスタート
さらに同社のRTD戦略を象徴するのが「男梅サワー」だ。最大の武器である“唯一無二の梅干し感”で支持を広げ、発売10周年を迎えた今年も上期111%と躍進を続ける。
「他にはないオンリーワンの味わいが提供価値。そこをぶらすことなく『本体+α』の価値をエクステンションで提供することで、ブランドに刺激を与え続ける」。
商品開発AI「N-Wing★」(ニュー・ウィング・スター)を活用した「男梅サワー 通のしょっぱ梅」を7月に数量限定で発売した。
「AIは0から1を生み出すことはできないが、1を10にする手助けになる。人間の壁打ち相手としてうまく機能してくれる」。今後のRTD開発では、レシピ作りの短縮にとどまらない活用を考えているという。
当面は「ニッポンのシン・レモンサワー」をはじめとした伸び盛りのブランドに戦略を集中させる方針。今月には新ブランドの発表も計画している。