流通革命に挑むトライアル① 小売×自前のIT技術が強み 40兆円のムダ・ムラ・ムリ解消へ

顧客によりよい購買体験を提供することを最大の目的に、40兆円強と推定される流通にまつわるムダ・ムラ・ムリの解消に挑むトライアルホールディングス(本社・福岡県福岡市)。食品を中心とした総合品揃え型のディスカウントストア店舗を運営するトライアルカンパニーとIT技術を提供するRetail AI社の2つの事業会社が成長のエンジンとなっている。

2022年6月期の売上高は5千974億円。総店舗数は284店舗(23年4月現在)。

2千坪以上のメガセンター、1千300坪程度のスーパーセンター、トライアルスマート、TRIAL GOの4つのフォーマットを展開している。

これにRetail AI社の力が加わり、魅力ある売場づくりを実現。先進技術の積極導入で流通のムダ・ムラ・ムリをなくすべくローコストオペレーションを行い、これが品質担保を伴うEDLP(エブリデーロープライス)の源泉になっている。

EDLPで売上と利益を拡大して先進技術に再投資――。このループの肝となるのが、自前のIT技術・IT人材となる。

トライアルカンパニーの野田大輔マーケティング部部長 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
トライアルカンパニーの野田大輔マーケティング部部長

取材に応じたトライアルカンパニーの野田大輔マーケティング部部長は「システムに不具合や改善点が生じた場合、スピーディーに対応できるのが特徴。例えば店内カメラの設置場所を変更したい場合、外注だと時間と費用を要するのに対し、当社は自前のため迅速に行える」と語る。

IT技術・IoT技術の“三種の神器”は、スマートショッピングカート・AIカメラ・デジタルサイネージ。

この三種の神器とAI冷凍ショーケースを実装したトライアル史上最先端の店舗「スーパーセンタートライアル宮田店」(福岡県宮若市)が21年10月にオープンした。

宮田店では、メーカー・卸・ほかの小売企業と共同で、リアル店舗での買い物の約8割を占めるとされる非計画購買(入店前に購入を計画していなかった商品について店内で購入を決定すること)を促す実証実験を行っている。

トライアルは20年9月に宮田店が位置する宮若市と官民連携協定を締結。地方創生にもつながりうる取り組みとしてリテールDXタウンとしての街づくりを進めている。

宮若市には、IoT機器を開発する「TRIAL IoT Lab(ラボ)」、購買データやカメラのデータを分析する「MUSUBU(ムスブ)AI」、デジタルサイネージやSNS用のクリエイティブを創作する「MEDIABASE(メディアベース)」の拠点があり、これらの拠点実証実験の場が宮田店となる。

「宮若市を一大リテールテックの街にしていきたい。編み出された施策について、実証実験の店舗でお客様がどのような反応をしているのかがいち早く確認できる。このように高速で様々なPDCAを回していくことで、多くの企業の方々とともに流通を変革していきたい」と意欲をのぞかせる。(つづく)

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