4月期の麦価改定を受け、パン粉業界が対応を迫られている。今回の上昇幅は5.8%。激変緩和措置として上昇幅はある程度抑制された。前回(22年10月期)は緊急措置として政府が価格を据え置いたが、それが災いし現場での値上げ交渉が困難になったケースも見られた。副資材や燃料など周辺コストの上昇分も吸収し切れておらず、適正価格の実現へ向け正念場を迎える。
1年前の5月、全国パン粉工業協同組合の関全男理事長は「慣行的に繰り返されてきた小麦粉主体の価格改定を見直さなければならない」と業界へ向け提言した。小麦粉だけでなく、油脂やイーストなどの副原料、エネルギー、運賃など周辺コストの大幅な上昇を受けてのものだ。業界では従来、小麦粉の価格変動に合わせ改定するのが一般的だった。
しかし、その前年の21年10月期が19%、22年4月期が17.3%と麦価の大幅な上昇が続いたことで状況は変わった。
以前であれば、小麦粉が上がりその分を転嫁できなかったとしても、下がった時に据え置くなどして帳尻を合わせていた。
だが、小麦粉だけでなく周辺コストの急激な上昇も相まって、過去に転嫁できなかった分を後から回収するのが難しくなってきた。
昨年4月期の分を転嫁できなかったメーカーでは「秋こそは」と意気込んでいたが、10月期が据え置きになったことで値上げの口実が失われた。主原料である小麦粉の価格は変わらなかったものの、それ以外のコストは軒並み上昇しており、年明けから値上げに動いたパン粉企業も少なくない。
しかし、「小麦が上がっていないので説得力に欠け、結局は見送らざるを得なかった」「粉価が上がっていないからと値上げに応じてもらえなかった」といった嘆きが聞かれた。
そして迎えたこの春。製粉各社が6月の価格改定を発表したことを受け、パン粉企業はおおむね7月からの値上げへ向け動く構えだ。推測される上昇額は乾燥パン粉でキロ当たり20~35円、生パン粉で同15~25円。このうちの半分もしくはそれ以上が、小麦粉以外のコスト上昇分と考えられる。金額に幅があるのは、前回値上げが実現できたかどうかによる。
今後、主原料や周辺コストがどう変動するかは不透明だ。「昨今のような急激な高騰は落ち着くのでは」「今回が値上げへ向け最後のチャンスになるかもしれない」といった推測も聞こえてくる。それだけに、今回は適正な利益を得るための対応が今まで以上に求められる。